2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16720146
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 全敏 東京大学, 大学院・人文社会研究科, 助手 (20313182)
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Keywords | 天皇 / 御膳 / 食事 / 贄 / 平安時代 / 宮廷 / 古代 |
Research Abstract |
今年度は、四つの角度から研究を進めた。 第一は、天皇の食事が行われた空間のより正確な理解を求めて、建築学の成果や絵画史料から得られる情報を総合し、平安時代の内裏の空間構成の検討を進めた。その結果、天皇の居住空間である清涼殿の室礼等について、従来とは異なるかたちで復原できることとなった。その成果は、東京大学教養学部美術博物館において5月17日-6月12日に行われた「王朝貴族の装束展」にて解説・パネル展示された。 第二は、昨年度来の課題であった、浜島家文書(学習院大学史料館所蔵)の調査を行った。これにより朝干飯御膳の実態が明らかになる期待ももたれたが、残念ながらその点に関する成果は得られなかった。しかし朝夕御膳の関係史料が多数発見されることとなり、現在検討中である。調査にあたっては所蔵機関の温かい配慮を被ることができた。残る魚菜文庫文書の検討は来年度の課題である。 第三は、中国・朝鮮と比較を行うため、特に韓国資料の収集に努めた。幸い今年度中には、朝鮮食事史の大著が邦訳され、さらに韓国在住の韓国人研究者の協力を得て、彼地の生活史博物館の図録や資料を入手し、これによってようやく朝鮮との比較がわずかずつではあるが可能になってきた。そのなかで、現在の伝統的朝鮮料理の食器・食事作法には、相当、隋唐様式の食事文化が残っていることが知られた。御飯だけが蓋のついた金属器に盛られることなどは、その最たるものである。 第四は、平安時代初期の一般的な食事の様相を検討するため、延暦寺内の生活を生々しく伝える「延暦寺禁制式」の史料的分析を行った。その成果は論文として公表することができた。 以上の研究を前提に、来年度には成果を博士論文としてまとめたいと考えている。
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