2005 Fiscal Year Annual Research Report
近代社会形成期の日本における仏教/教化/教育の関係についての社会史的研究
Project/Area Number |
16720150
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷川 穣 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (10362401)
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Keywords | 近代日本 / 学校教育 / 民衆教化 / 宗教 / 仏教 / 社会史 / 教導職 / 佐田介石 |
Research Abstract |
平成17年度は、幕末から明治前期の仏教と教育の関係を多様な角度から重層的に把握すべく、二つの視角から研究をすすめ、成果を公表した。一つは、当該期を生きた一僧侶の軌跡の追究である。その対象となる僧侶・佐田介石は、天文学研究を皮切りに、幕末期の政局要人への面談、明治初年の建白書、明治10年代の演説・結社・通信教育的雑誌の刊行などの活動を通じて、仏教の社会的価値をアピールした。その宗派を超えた幅広い活動と、近代仏教史上の意義を明らかにし、『明治維新と文化』(明治維新史学会編、吉川弘文館刊行)に論文「周旋・建白・転宗-佐田介石の政治行動と「近代仏教」-」を掲載した。 もう一つは、公立学校教員を僧侶が兼務するという、今日の日本でよく見られる事象についての言説と実際の歴史的究明である。近代学校教育の「世俗性」あるいは「政教分離」理念にも大いに関わるこの重要な問題について、『明教新誌』など仏教系雑誌群の発掘・精査と全国の自治体史史料の博捜をもとに、教育史学会第49回大会(於・仙台市)、および仏教史学会第56回学術大会(於・京都市)にて学会報告を行った。 これら以外にも、近代日本における教育と身体、教室という空間に関わる論文を執筆、単行本の一章として掲載した。また、前年度に執筆した明治前期の筑摩県における民衆教化の実相を明らかにした論文も、同じく単行本の一章として公表した。なお、前年度に京都大学大学院文学研究科に提出した学位請求論文「明治前期における教育/教化/宗教-その関係史的研究-」が、同研究科での審査の結果認定され、平成18年1月に京都大学博士(文学)の学位を取得した。
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