2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本近世城下町における武家の消費行動および家相続と都市社会
Project/Area Number |
16720157
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
岩淵 令治 国立歴史民俗博物館, 研究部, 助教授 (90300681)
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Keywords | 江戸時代 / 都市 / 城下町 / 江戸 / 武家地 / 武士 / 消費 / 家 |
Research Abstract |
現在の日本の大都市の多くは、世界の前近代都市の中でも特異な都市形態-近世城下町を淵源とする。その最大の特徴は身分による居住地区分であり、とくに武家地は城下町成立の根幹にかかわり、最大の面積を占めたという点できわめて重要である。しかし、1990年代からはじまった武家地の研究蓄積はまだ浅く、いまだに武家地は都市社会の中に位置づけられていない。すでに、研究代表者は、武家屋敷が果たす都市の機能(治安維持など)、武家地が町・寺社・近郊農村とむすぶ諸関係(地域論)、藩邸の消費・生産が都市経済に及ぼす影響を検討し、武家地を近世の都市社会に位置づけ、近世城下町の構造と特質を照射してきた。本研究では、上記の基礎的研究を発展させ、藩主の分析も継続しつつ、藩主家の女性および女中・江戸詰藩士・旗本・御家人をとりあげる。そして、日記・小遣帳にみる生活・消費行動(購買行動、文化的消費<信仰・遊山>、ゴミの廃棄や町人貸家等)、江戸における身分・藩を越えた「家」の相続等を検討し、より微細なレベルで武家地を都市社会に位置づけることを目的とする。初年度である本年度は、八戸市立図書館、秋田県立図書館、国文学研究資料館等で現地踏査、予備的な史料調査・収集を中心に行い、藩士の日記、藩士の内職にかかわる史料、藩士の家譜、旗本の史料、都市生活をおくる上で重要となる消防体制にかかわる史料を収集した。さらに一部については分析をすすめた。まず、八戸藩士遠山家を事例に、江戸での購買行動が国元での消費生活に位置付いていたことを明らかにし、江戸勤番武士=田舎者という通説を批判する論文を公表した。また、関東近世史研究会大会報告において、従来の町火消重視の江戸の火消研究に対して、武家火消・定火消、および現場で諸々の火消を指揮する幕府の火事場役人を含めた「消防体制」を提起した。
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