2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本近世城下町における武家の消費行動および家相続と都市社会
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16720157
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
岩淵 令治 国立歴史民俗博物館, 研究部歴史研究系, 助教授 (90300681)
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Keywords | 江戸時代 / 都市 / 城下町 / 江戸 / 武家地 / 武士 / 消費 / 家 |
Research Abstract |
現在の日本の大都市の多くは、世界の前近代都市の中でも特異な都市形態-近世城下町を淵源とする。その最大の特徴は身分による居住地区分であり、とくに武家地は城下町成立の根幹にかかわり、最大の面積を占めたという点できわめて重要である。しかし、1990年代からはじまった武家地の研究蓄積はまだ浅く、いまだに武家地は都市社会の中に位置づけられていない。すでに、研究代表者は、武家屋敷が果たす都市の機能(治安維持など)、武家地が町・寺社・近郊農村とむすぶ諸関係(地域論)、藩邸の消費・生産が都市経済に及ぼす影響を検討し、武家地を近世の都市社会に位置づけ、近世城下町の構造と特質を照射してきた。本研究では、上記の基礎的研究を発展させ、藩主の分析も継続しつつ、藩主家の女性および女中・江戸詰藩士・旗本・御家人をとりあげる。そして、日記・小遣帳にみる生活・消費行動(購買行動、文化的消費<信仰・遊山>、ゴミの廃棄や町人貸家等)、江戸における身分・藩を越えた「家」の相続等を検討し、より微細なレベルで武家地を都市社会に位置づけることを目的とする。2年目にあたる本年度は、都市生活をおくる上で重要となる消防体制にかかわる史料(神宮文庫)、勤番武士が訪れる名所であり藩邸と外部社会を検討する素材としても重要な丸亀藩・高松藩邸の金毘羅社関係の史料(金刀比羅宮図書館)を撮影収集した。そして、昨年度収集分もふくめ、史料の分析をすすめた。また、従来の町火消重視の江戸の火消研究に対して、武家火消・定火消、および現場で諸々の火消を指揮する幕府の火事場役人を含めた「消防体制」を提起した論文を公表した。このほか、廃棄物学会ごみ文化研究部会において江戸におけるゴミの廃棄の報告を行い(「江戸のごみ処理再考」2005年4月)、現代のゴミ問題に取り組む研究者や実務者との交流を図ることができた。
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