2006 Fiscal Year Annual Research Report
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16720158
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
井上 智勝 (財)大阪市文化財協会, 大阪歴史博物館, 学芸員 (10300972)
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Keywords | 幕藩領主 / 神社 / 式内社 / 触頭 / 諸社禰宜神主法度 / 神職 / 領国 / 非領国 |
Research Abstract |
1.17世紀後半期の式内社顕彰は徳川一門のほか、一部の外様藩(岡山・土佐・平戸)、譜代藩(磐城平)で行われていた。これらは当該幕藩領主による、儒学的名分論および反正・排仏主義に依拠した神社の秩序化の方向上にあった。この点において、官位・許状の有無によって神職を序列化した諸社禰宜神主法度(「神社条目」)の発布など幕府の神社政策と通じるものである。 2.宝暦9年の幕府による全国神社調査触は、管見の限りでも奥羽から九州まで30国で、大藩・小藩・幕領・旗本領等を問わず確認できた。したがって全国触と理解される。当該触は関白の要請により幕府が発したものであるが、社人のある神社の書き出しなど要請にない箇条が付加されている。これが幕府の作為かは明らかにできなかったが、当該触を契機に神社帳を具えたり、改訂した藩もあり、神社の実態把握を促進する意図を含意していた可能性は想定される。 3.触頭等を戴く神職組織は領国・非領国地域を問わず、各地に多数存在した。非領国地域では領主権力から比較的自由で、前代以来の自律性を残した。領国領主の神職編成には、(1)領主権力によって触頭が設定される場合と、(2)既存組織が利用される場合があった。(1)の場合でも下部組織として既存組織が利用されることは多かった。また(1)の場合、神職組織は当該権力が消失・縮小すると解体へ向かった。(2)においては、在地からの抵抗は少ないが、領主権力が地域有力社の自律性に掣肘を加えられることがあった。神職組織の編成原理は単に触頭-触下という組織原理だけではなく、官位、称号、参勤など、いくつかの原理があった。このうち参勤という神職集団の形成形態は、古態を残すものと考えられる。本所はかかる組織に依拠して諸国の神職支配を行ったが、既存の組織や秩序からの脱却を図る神職の動向を助長する役割を果たす場合もあった。
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Research Products
(1 results)