2006 Fiscal Year Annual Research Report
档案・文集史料からみた中朝関係の様態-14・15世紀の明朝・朝鮮・女直-
Project/Area Number |
16720160
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
荷見 守義 弘前大学, 人文学部, 助教授 (00333708)
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Keywords | 遼東 / 巡按山東監察御史 / 山東 / 兵備道 / 安楽州 / 自在州 / 監察 / 景観 |
Research Abstract |
平成18年度は明朝档案史料の解析を中心として研究を進め、研究論文を公刊(または公刊予定)するとともに、広島大学で関連した研究報告を行い、また、現在ホットな話題である景観の歴史的形成についての論文を翻訳した。 1、研究論文 本年度は、『中国明朝档案匯編』所収の明朝遼東関係档案の分析を進めた。明代の遼東地方は遼東鎮の下、軍管区支配が敷かれていたが、兵糧の確保・管理、将卒や軍属が引き起こす様々な事件への対応のため、監察や民政の官が不足していた。そこで遼東軍政を監察するため巡按山東監察御史が派遣されるようになり、やがてそれは監察に止まらず、実質的に軍政に指導力を及ぼすようになったと推測できる。ここで留意したいことは巡按山東監察御史という肩書であり、「山東」の地域名称が冠されているが実質的にこれは専属的に遼東に派遣された監察官僚であった。このことは九州大学『東洋史論集』で「明代巡按「遼東」考」で明らかにしたことであるが、遼東に兵備道の整備が進むと、布政司・按察司の肩書を有する官僚が派遣されるようになり、軍政を補完して監察業務に当たるようになった。ここにおいては前職が山東本省である官僚が割合多く見出された。しかし、このことを以て遼東が山東の影響下にあったとすることはできない。このことについては明代史『山根幸夫教授追悼論文集』(汲古書院・2007年7月刊行予定)に「明代遼東守巡道考」として明らかにした。また、遼東において唯一州として存続した安楽州・自在州の知州の果たした役割について档案史料から検討し、中央大学『人文研紀要』に「明朝档案にみる安楽・自在知州」としてその方面研究の序論とした(2007年9月刊行予定)。 2、研究報告 広島大学史学研究会大会東洋史部会において「明代遼東の山東官」として報告を行った。 3、翻訳 大阪市立大学『東洋史論叢』15に汪利平論文を「天境」として全訳した。清朝時代に中国江南の代表的な景観として有名である西湖がいかに人工的な景観であり、自然景観ではないのか、そしてその人工的な景観は清朝皇帝の江南に対するプレゼンスであったかが明らかとされる。
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