2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16720165
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐川 英治 岡山大学, 文学部, 助教授 (00343286)
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Keywords | 北魏 / 『魏書』 / 漢化政策 / 平城 / 洛陽 / 均田制 |
Research Abstract |
1、『魏書』の史料批判に関する研究をおこないその成果を発表した。北魏史を道武帝の北魏建国に始まり孝文帝の漢化政策で頂点を迎えるとする『魏書』の歴史観は、実は孝文帝の漢化政策を転機に山東の漢族貴族から生まれてきたものである。それ以前の北魏の正史では、特に道武帝の北魏建国以前と以後を分ける体裁はとっておらず、中原進出以前と以後は完全にひとつながりの歴史ととらえられていた。また孝文帝以後も北族の抵抗によって「魏史」の歴史観にもとづく正史編纂はおこなわれず、東魏の高洋が漢人名族渤海の高氏を名乗っておこなった東魏北斉革命によってはじめて正史に取り入れられ、『魏書』として完成することになったのである。このように北魏史に対する『魏書』の歴史観には、漢族と北族の対立を背景とした政治的な偏りがあり、『魏書』の提示する歴史観を補正していく必要であることを明らかにした。 2、北魏史像の再構成に関する研究としては都城建設に関するものと石刻史料に関するものを発表した。前者については北魏と平城と洛陽を比較し、平城が遊牧的な文化を背景とした非常にユニークな都城であったこと、これに対して洛陽は孝文帝の漢化政策と結びついた理念先行型の都市であり、それゆえに中軸線に対して左右対称に空間配置をおこなう隋唐長安城につながる都市プランが北魏洛陽城で飛躍的な進展を遂げたことを明らかにした。後者では石刻史料を用い、孝文帝時代に均田制によっていったん分断された郷里の共同体的なつながりが、東魏北斉時期に仏教をつうじて再び回復しつつあり、また国家もそれを認める方向にあったことを論じた。 3、大同と洛陽で積極的にフィールドワークをおこない、都市空間復元のための資料収集をおこなうとともに、現地の研究者と交流をおこなった。
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