2005 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭の朝鮮植民地化過程における山東華僑の活動
Project/Area Number |
16720168
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
石川 亮太 佐賀大学, 経済学部, 助教授 (00363416)
|
Keywords | 朝鮮 / 華僑 / 貿易 / 出入国管理 / 金融 / ネットワーク / 山東半島 / ロシア |
Research Abstract |
本年度は課題について二つの視角から検討を進めた。一つは山東華僑の移動過程を朝鮮の出入境管理政策との関係から考察するというものであり、それによって近代東アジアの広域的な人的移動が日本植民地の拡大によって蒙った影響を解明しようとした。手法としては専ら日本・朝鮮と中国(清朝)の外交文書をクロス参照する形をとることにし、そのため平成17年9月には大韓民国ソウル市にて資料調査(ソウル大学図書館など)・聞き取り調査(漢城中華教会)を実施したほか、数回の国内出張を通じて資料調査を実施した。その結果明らかになったのは次のような事柄である。開港(1876)後の朝鮮では海外との人的移動の窓口を特定の開港場に限定したが、現実には中央政府が領域的・一元的に人間の移動を管理するという制度は十分に機能せず、山東半島と朝鮮西海岸の未開港場の間には密接な「密貿易」のネットワークが存在した。朝鮮王朝が移動の集中的管理を行い得なかったのは、その行政・財政システムが著しく分節的な構造をとっていたためであり、そうした行財政システムの分節性が解消された保護国期以後にようやく「密貿易」も沈静化に向かった。この研究内容については次年度にかけて発表の予定である。 また二つ目の視角として、華僑の朝鮮を巡る越境的な金融活動に注目し、その植民地化過程での変化を検討した。華僑などを担い手とする近代東アジア市場と植民地化の関係を検討するという問題意識は一つ目の視角と共通である。具体的には20世紀初頭から極東ロシア領と朝鮮東北部の間で発生したロシア通貨の流通について、華僑を担い手とする上海を中心とした国際資金移動との関連を明らかにした。この研究内容については平成17年10月のロシア史研究会大会(10月22日,於成蹊大学)で口頭報告を経て、現在雑誌論文として投稿中であり、2006年5月頃に刊行の予定である。
|