2005 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀後半から19世紀前半におけるイギリス財政革命の政治的・社会的影響
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16720174
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂本 優一郎 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (40335237)
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Keywords | 投資社会 / 公債 / 投資 / 投機 / トンチン年金 / イギリス / アイルランド / 公債保有者 |
Research Abstract |
本年度は本研究プロジェクトの第二年度にあたる。前年度の基礎作業を通じて公債保有者の実態を確認しつつ、今年度はあらたに「投資社会」を構成する認識論的基盤についても考察を進めた。まず、公債保有者の実態については、今年度は地方在住者について調査を実施した。イギリス出張によって、ハンプシア、イーストサセックス、リンカン、ケント、ハートフォードシアおよびメトロポリタンの各文書館において関係史資料の調査、蒐集した。このうちアイルランド政府が起債したトンチン公債については、前年度に公刊した研究成果(「空間としての投資社会」川北・藤川編『空間のイギリス史』・(山川出版社、2005年))で整理した論点を、ハンプシア・レコード・オフィスで蒐集した史料にもとづき、特定の個人投資家にそくして事例研究をおこなった。その成果の一部は2004年12月に「アイルランド史研究会」において報告した。イーストサセックス・レコード・オフィスの史料からは女性およびその孤児への遺贈を目的とした公債購入の事例を、リンカンおよびケントで蒐集した史料からは運河株式購入と公債投資との関係を、ハートフォードシアで蒐集した史料からは公債請負人と投資家とのやりとりを、メトロポリタン・アーカイヴズの史料からは公債投資にかかわる帳簿の分析をすすめた。これらの研究によって公債保有にかかわるデータベースを構築したが、公債保有をめぐる諸相をほぼ明らかにしえたと思われる。次に「投資社会」の認識論的基盤について。前年度に蒐集した英国図書館およびゴールドスミス・クレスライブラリ所蔵のパンフレット数百点を分析した。公債投資を合理的にとらえて正当化する言説と、ブローカー批判に典型的に見られる「投機」批判を旨とする言説との対立関係が政治的契機によってうまれたこと、この対立構造が18世紀後半に顕在化すること、また「投機」批判に対する反批判を通じて「投資」概念が生まれるという言説の構築過程が観察された。この点については、現在、原稿を準備中である。研究初年度で蒐集した史料の分析という今年度の目的は、ほぼ達成されたと考えられる。
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Research Products
(1 results)