Research Abstract |
本補助金に拠る今年度の研究の最大の成果は,英国公文書館(National Archives,旧Public Record Office, Kew, England)における史料調査および収集であった。申請書にも記したとおり,1950年代の米国の中東政策分析には,そめパートナーであっ・た英国側の動向および政策決定過程の分析が不可欠であるが,周知のように,英国側の公刊史料はマイクロフィルムを含めてもごく限られているため,英国における史料収集は,本課題に関する研究を進める上で不可欠であった。 英国公文書館においては,英内閣および英参謀本部の史料を中心に調査を行った。特にスエズ動乱以降に関しては,公刊史料が事実上皆無という状態であるため,閲覧した史料のほとんどが初見であり,また先行研究でも使用されていない数多くの興味深い史料に遭遇した。内閣関連史料については,閣議の下部レヴェルの内閣委員会の史料を中心に閲覧し,先行研究ではあまり触れられていないスエズ後の中東政策形成過程を具体的に示す史料を発見した。また,参謀本部関連史料の中には,米国側では非公開扱いとなっている,1950年代半ばにおける米英軍部の連携を示す貴重な史料を発見した。また,英国公文書館では,史料の電子検索システムの構築が進んでいるものの,現地でしか閲覧できない大量の史料インデックスが存在する。ごく一部ではあるが,これらのインデックスを複写できたことで,日本にいながら史料複写依頼を行いうる可能性が拡大した。申請時以上に多くの金額が消耗品費として必要になったのは,以上のような調査の結果,予想以上に大量の史料を複写することになったためである。 今年度の具体的な実績としては,五十嵐武士編『アメリカ外交と21世紀の世界』(仮題,2005年刊行予定)に「アメリカ外交と中東」と題する一章を寄稿した。また,過去の成果に属するが,"Formation of the American Regional Policy for the Middle East,1950-1952:The Middle East Command Concept and Its Legacy"in Diplomatic History, Vol.29,No.1(January,2005)が刊行された。次年度は,後者の続編となる論考を,英国側史料も活用して執筆予定である。
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