2005 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀国際社会における環境保護論の展開とイギリス帝国
Project/Area Number |
16720176
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水野 祥子 大阪大学, 文学研究科, 助手 (40372601)
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Keywords | 乾燥化 / 林学 / イギリス帝国 / 森林保護 / 世界木材飢饉 / 環境史 / インド |
Research Abstract |
20世紀前半にイギリス帝国内やアメリカで刊行された主要な科学誌、林学専門誌(Journal of Forestry, Indian Forester, Empire Forestry Journal, Journal of the Royal Geographical Society, South African Journal of Science, Journal of the Royal African Society, Nature)を網羅的に分析し、乾燥化理論(desiccation theory)をめぐる議論の展開を追った。第一次世界大戦後になると、世界の森林資源がやがて枯渇するという「世界木材飢饉」論の高まりによって、森林保護の取り組みが進められた。さらに、1920年代末から30年代にかけて、乾燥化が進行し、土壌浸食や洪水が増加したという報告が世界各地から寄せられるようになり、こうした自然災害の増加と世界規模の森林破壊とを結びつける議論が顕著になった。森林がもたらす諸影響のなかでも、水源涵養機能や土壌浸食防止機能の有効性に注目が集まり、林学のみならず、土木工学や土壌学、農学の専門家の間でも、乾燥化理論の信憑性が高まっていった。19世紀末から乾燥化理論を提唱していたインドの森林管理官は、乾燥化の問題を熱帯特有の問題と主張してきたが、大戦間期になると、世界中で普遍的な問題と見なすようになった。アメリカの林学専門家は、乾燥化理論を科学的に立証しようとする研究をリードしたが、乾燥化の防止を世界の共通利害とする言説を広めるのにより積極的な役割を果たしたのは、インドをはじめヨーロッパの植民地の森林管理官であった。かれらは、森林枯渇が土地や気候の乾燥化に及ぼす影響を世界で最も強く警告するグループを形成していたといえよう。なお、本年度と前年度の研究成果は、3月に刊行される著作の後半部分に反映されている。
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Research Products
(1 results)