2005 Fiscal Year Annual Research Report
キリスト教海外ミッションにおける女性の役割と近代的家族モデルの普及
Project/Area Number |
16720177
|
Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
並河 葉子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 助教授 (10295743)
|
Keywords | gender / mission / empire / family model |
Research Abstract |
今年度は、前年度に引き続いてイギリス系のプロテスタントミッションが海外において活動するさい、女性たちがどのような役割を果たしていたのか検証するため、主として伝道協会の年次報告書および宣教師名簿を使い、伝道協会が海外に派遣したスタッフたちにどのような役割を期待していたか、また具体的に女性たちにはどのようにミッション活動にかかわったのかを検証した。年度末の海外調査においては具体的な宣教師像を把握するため、未整理ながら多数の宣教師史料を所蔵する大英図書館やロンドン大学などの所蔵史料を調査した。 19世紀前半、ミッション現場における女性たちは原則として宣教師の「妻」として家庭責任を負いつつ、夫妻で積極的に非ヨーロッパ世界における活動を展開していたこと、さらに19世紀後半になると女性たちはみずから経済的に独立した「宣教師」へと19世紀を通じてみずからの立場を変化させていくことが明らかになった。さらにかのじょたちはその間、一貫して非ヨーロッパ世界に一夫一婦制に基づくヨーロッパ型の家族モデルとジェンダー役割を浸透させることを期待されていたことが明らかになった。 さらに伝道協会という組織の変遷を検証したところ、19世紀を通じて「ジェンダー」だけでなく「人種」や「階級」などが差異として厳格に規定されていくプロセスも浮かび上がり、福音主義やミッション活動などが近代的な価値観とその限界を非常にクリアに表出する媒体であることが明らかになりつつある。 来年度に向けて、女性の役割を明確に家庭や子どもの養育といった分野に固定する思想が伝道協会設立の背景となった福音主義思想とどのような関連を持つのかについて検証中である。
|
Research Products
(2 results)