2004 Fiscal Year Annual Research Report
弥生時代における経済構造の研究-石器流通と金属器流通の比較分析-
Project/Area Number |
16720184
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺前 直人 大阪大学, 文学研究科, 助手 (50372602)
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Keywords | 弥生時代 / 石鏃 / 鉄鏃 / 戦争 / 経済 / 高地性集落 |
Research Abstract |
本年度は、大阪湾沿岸地域において金属器と石器の量的比率が劇的に変化する弥生時代後期前後の時期に属する資料を中心に資料集成を進め、当地域における次のような石器から金属器への変遷過程が明らかになった。 とくに本年度は出土点数が多く、昨日が単純であるため石器と金属器(青銅器、鉄器)の客観的比較が容易な鏃(やじり)を中心に資料集成を実施した。また、そのなかで代表的な弥生時代集落である兵庫県川西市加茂遺跡、神戸市頭高山遺跡、大阪府和泉市池上曽根遺跡、四条畷市雁屋遺跡から出土した石鏃および鉄鏃の資料調査を実施し、転用や再利用といった属性をしめす細部情報の記録に努めた。 その結果、弥生時代中期後葉には、重量が増したいわゆる「戦闘用」石鏃が多数出土する集落では、多くの鉄鏃が出土する傾向があることが判明した。次に弥生時代後期になると大阪湾沿岸地域では鏃組成中の鉄鏃組成が激増することが確認でき、石鏃には、あらたに厚手細身の器種、すなわち当時の鍛冶技術の限界から鉄鏃ではなし得なかった形態の鏃が出現することが確認できた。同じ傾向は鋳造品であることから自由に形態を創出できた青銅鏃にも認められた。これまで石器と鉄器の関係性でしか論じられなかった当該期の素材変化について、青銅器を加えることにより、全く異なった経済構造の変化過程が復元できる可能性をみいだすことができた。 さらに興味深い事実として、青銅鏃と鉄鏃の出土量が集落および集落形態(高地性集落と在来低地部集落)により大きな格差があることが判明した。つまり、これまで金属器として同一視されてきた鉄と青銅は、石器との変換過程期において、その流通構造に大きな違いがあったと考えられるのである。なお、以上の成果の一部は第18回古代学協会四国支部大会にて報告した。
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Research Products
(2 results)