2005 Fiscal Year Annual Research Report
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16720195
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
鈴木 裕明 奈良県立橿原考古学研究所, 調査第1課, 主任研究員 (90260372)
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Keywords | 古墳出土木製品 / 古墳出土木製品の器種 / 掘削具 / 木のはにわ / コウヤマキ |
Research Abstract |
昨年度に引き続いて、古墳出土木製品の集成、各木製品の器種・樹種・実測図・写真などのデータ入力、新規に確認された古墳出土木製品の調査などを行い、研究を進めた。現状での古墳出土木製品の分布は、関東から南九州までであることが明らかとなったが、近畿以外の確認例はきわめて少ない。そのなかで、近畿の古墳出土木製品に普遍的にみられる掘削具が、関東、中部、南九州の各古墳周濠から出土しており、地域を越えた共通性が確認された。また、これまでに集成された古墳出土木製品の整理を行い、工具、掘削具、運搬具、紡織具、容器、調度、発火具、武器、祭具、威儀具、楽器、建築・土木部材、木のはにわ、用途不明品の13器種があることを明らかにした。そのなかで前期〜後期を通じて古墳周濠から出土するものには、工具、掘削具、容器、威儀具、建築・土木部材があり、特に掘削具は巨大古墳にも中小の古墳にもみられ、前述の列島各地域に存在していることと合わせ、普遍的な古墳要素となっていたとみられる。出土古墳の時期が限定されるものには、紡織具、調度、発火具、武器、祭具、楽器、木のはにわがある。集落遺跡での出土は、木のはにわ以外比較的多く確認できるのであるが、古墳においては出土数が非常に少ない。木のはにわは、ほとんどがコウヤマキ製であり、一方同時期の集落遣跡からのコウヤマキ製品の出土はきわめて少ない。これはコウヤマキが古墳用の材として意識されていたことの現れとみられ、木棺と同様に木のはにわが古墳用の木製品であることが改めて確認された。また、笠形・鳥形木製品の初出が、古墳時代中期の古市・百舌鳥古墳群中の巨大古墳に確認できることから、その造営にともなって新しく考案された樹立物であったとみられる。この背景としては、前期の巨大古墳で木棺に盛んに使用されたコウヤマキが、前期後半以降石棺に取って代わられることから、古墳にとって必須の用材であるコウヤマキが木のはにわに姿を変え、再び巨大古墳において使用されるようになったと考えられる。また、笠形木製品の木取りからみて、大型古墳ほど幹の大きいコウヤマキを使用しており、かつて木棺の用材として管理されていたコウヤマキを、大型古墳へ優先的に供給するようなシステムが再び構築されたと推測される。以上の内容の一部は、京都大学生存圏研究所第26回生存圏シンポジウム「木の文化と科学V 先人に学ぶ木の利用」において『古墳時代の木の利用-木製威儀具の時代-」と題して口頭で研究発表し、同講演要旨集に文章化している。また、「古墳周濠から出土する木製品」と題した論文も今年度発表予定である。
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