2005 Fiscal Year Annual Research Report
1990年代以降のわが国人口の都心回帰現象と行政対応に関する研究
Project/Area Number |
16720197
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮澤 仁 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10312547)
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Keywords | 都心回帰 / 公共サービス / GIS / 行政対応 / 地方財政 |
Research Abstract |
本研究は、東京の都心部を事例地域に、近年の都心人口の回復現象(都心回帰現象)に関して(1)都心の人口構成の変化、(2)人工構成の変化に伴う公共サービスや対人社会サービスに対する需要の変化と行政対応、(3)それらの行政需要への対応が自治体財政に及ぼす影響、の3点に関して実態を明らかにすることを課題とする。平成17年度は、上記の課題(2)を中心に、調査・資料収集を実施した。 その結果、人工構成の変化に伴い行政需要が大きく変化した公的サービスとして、教育、保育、介護の各部門が明らかになった。前者のサービスは、とくに分譲マンションに入居した、夫婦と学齢期以下の子どもからなる世帯が人口回復に顕著に寄与した江東区において需給にアンバランスが生じており、特定地区の小学校で教室の不足が深刻化していた。これに対して自治体は、学校選択制の導入、通学区域の弾力的設定による是正を試みる一方、サービス需要自体の抑制を図るため、マンション建設計画の調整に関する条例を定めていた。介護サービスに関しては、民間の介護付き有料老人ホームの開設が高齢者の都心回帰を促す一方、介護保険給付が膨らむ懸念から、自治体がその抑制に取り組みはじめており、中央区などでは住民も介護保険料の高騰を理由に建設反対を展開していた。また、保育に関しては、中野区などでみられるように、保育所の民営化や指定管理者制度の適用により運営の民間委託が進められており、都心部に居住する子どもをもつ共稼ぎ世帯に対して、柔軟なサービスを提供することが民間のノウハウに期待されている一方、その背景には自治体雇用の保育士の定員削減問題が存在していた。 以上のように、近年の都市人口の回復に伴う行政需要の変化に直面した自治体は、地方自治法の改正、規制緩和、民間の参入促進といった地方自治制度が変革されるなかで、さまざまな対策を講じている。このことと自治体の財政との関係を分析することが最終年度の課題である。
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