2005 Fiscal Year Annual Research Report
中華人民共和国・台湾における言語ナショナリズムとアイデンティティ形成
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16720211
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
藤井 久美子 宮崎大学, 教育文化学部, 助教授 (60304044)
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Keywords | 台湾:中華人民共和国 / 言語政策 / 母語教育 / 国語 / 依法治国 / 『国家通用語言文字法』 / 中華民族 |
Research Abstract |
以下、平成17年度に得られた知見を、台湾地域、中華人民共和国の順で概述する。 1.台湾地域について (1)平成16年度には、言語教育の現状から見て、台湾の人々の母語教育の進展と共に英語教育偏重の傾向が顕著に現れていることを述べた。平成17年度は、このことを1990年代初頭から2004年までの『教育部公報』(文部科学省による政府公報に値するもの)の記述によって詳細に検討した。英語は当初、一外国語でしかなかったが、台湾の母語教育の推進と共に英語教育も強化されていることが明らかになった。 (2)言語使用に関する意識調査から、若年層ではすでに「国語」という用語を用いることが稀になってきていることが伺える。台湾では英語に次いで有力な外国語である日本語も含め、「国際語」についてのアンケート調査を行った。 この結果については現在分析中である。 2.中華人民共和国について 中華人民共和国では「依法治国」を目指して、2001年1月に『国家通用語言文字法』が施行された。これ以降、各種政策の制定や実施においては言語もその対象と考えられるようになっていると思われる。特に、本研究が目指す言語ナショナリズムとの関連でいえば、社会言語学はもちろん、社会学の一分野である民族社会学で、言語政策に言及した研究が進展しつつあることがわかった。収集した資料からは、中華人民共和国では、言語とナショナリズム、アイデンティティについては、民族概念、特に「中華民族」概念との関わりから検討が行われていることが明らかになった。
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