2004 Fiscal Year Annual Research Report
現代台湾における植民地統治遺産「日本語」の影響に関する緊急調査研究
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16720213
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Research Institution | Hiroshima Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
上水流 久彦 県立広島女子大学, 国際文化学部, 助手 (50364104)
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Keywords | 台湾 / 植民地主義 / エスニシティ / 日本語 / 韓国 / 文化人類学 / 生活世界 |
Research Abstract |
本研究の目的は、学歴やエスニックグループの違いに留意しながら、日本植民地時代に教育をうけた人々(以下、日治世代)の生活実践のなかでの日本語の使用状況を文化人類学的手法に基づいて把握することにある。この点を明らかにすることから、植民地支配が現代社会にどのように影響をしているか、言語が「われわれ意識」の創造やエスニシティにどのように影響しているかを探るものである。 今年度は学歴の違いに留意しながら、筆者が長期調査を行なった台北で聞き取りを行なった。今年度の調査した日治世代の人々は合計で16名(男性8人、女性8名)である。男性のうち、高等教育を受けた方は5名である。その他、実業系の学校を卒業した方が2名である。女性は4名(高等女学校)で、その方々以外は公学校を卒業している。この他、日治世代の子女に対しても聞き取りを行なった。人数は5名のみで男性2名、女性3名である。 今年度の研究からは具体的には以下の二点が明らかとなった。ひとつは、日本語を話せることは他者と自己との違いを示すための道具として用いられていること、もうひとつは、日本語を話せる状況を韓国と比較して語る場合があることである。これらの点から、台湾における日本像の成立に関して、宗主国と植民地という二項対立に基づく研究視点では捉えきれない領域が存在し、台湾の自画像の形成において「日本」が不可欠な要素ではないことがわかってきた。さらにこの点を踏まえて旧宗主国と旧植民地という二つの軸に基づく植民地主義的研究が学術的に旧植民地を再度植民地支配する危険性に陥る可能性があると考えるようになった。
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