2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16730002
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大森 秀臣 岡山大学, 法学部, 助教授 (10362948)
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Keywords | 共和主義 / マイケルマン / ハーバーマス / 審議 / 熟議 / 公共性 |
Research Abstract |
本研究は三年計画で進める予定であるが、初年度である本年度では、来年度以降の研究の全体的な大枠とパースペクティヴを示す作業に当てた。本年度に公表した「法を支える政治、政治を律する法-マイケルマン=ハーバーマス法理論をもとに」では、米国の憲法理論家フランク・マイケルマンの業績を下地にして、それをドイツの社会学者・政治理論家ユルゲン・ハーバーマスの討議理論と接合し、法と政治の関係モデルを概略的に示した。この二人の思想的背景の異なる論者を接合したのは、従来の公私関係の捉え方を転倒させるマイケルマンの共和主義の発想が、今までその理論的潜在力を必ずしも完全に捉えつくされたわけではなかった、ハーバーマスの討議理論の難解かつ豊潤な思想を明らかにし、これにより共和主義の政治の具体的内容をよりいっそう詳述することが可能になると考えたからである。ここで得られた知見は、本研究の大きなテーマである「法的枠組みの公共的正統性」をめぐる問いへの暫定的な結論であり、その深化と発展の下地になる準拠点として理解している。 以上の成果と平行して、未だ公表されるには至っていないものの、マイケルマンに代表される共和主義法理論が、従来共和主義とほぼ同一視されてきた共同体論、あるいは漠然と同一グループに属すると理解されてきた近年のデモクラシー論とどのような点において異なるのかについて、幾つかの文献をもとに検討した。さらに最近端緒についたばかりではあるが、共和主義の観点からは、従来の支配的法理論であるリベラリズムがどのように評価されるのか、共同体論とは異なるアプローチは可能なのかについて、検討をはじめたところである。今後は、本年度で得られた共和主義の政治のモデルを、他の思想的動向との異同という観点から、位置づけなおしてみる予定である。
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