2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16730003
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 弘 九州大学, 大学院・法学研究院, 助手 (80363307)
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Keywords | 日本法制史 / 中世 / 訴訟制度 / 濫訴 / 堺相論 / 土地境界紛争 / 土地所有 / 堺打越 |
Research Abstract |
本年度の主たる目標であった「史料の渉猟、データベース化」は、ほぼ達成できた。また、関連領域の研究者・実務家との交流を通じ、新たな視点の導入が可能となった。一方で各論点について精緻さに欠けるところもあったので、次年度以降、補完していきたい。以下、五項目に分け、成果を述べる。 1,史料の渉猟、データベース化 本年度の主たる目標であった史料の渉猟については、ほぼ達成できた。とりわけ、刊行史料からは史料をほぼ収集できた。しかしながら、諸機関が保存している原文書の調査は、時間的制約から未収集の状況にある。次年度の課題としたい。また、データベース化については、史料の一覧リスト及びテキストファイルを作成中である。 2,研究者との交流 諸種の学会や研究会に参加し、研究者・実務家と活発に交流した結果、研究内容や史料のデータベース化等に関わる多様な情報を得た。 とりわけ、現代の土地境界紛争に携わる土地家屋調査士や土地法・民事訴訟法の研究者との交流によって、歴史事象を複眼的に捉える視角を得た。現代の「境界確定ADR」に関する議論状況は、本研究へ還元できる。 3,比較法史的観点 ローマ法における「乱訴の罪(calumnia)」に関する基本的概要を把握した。しかし、未だ基礎的な把握であり、他の諸法についても未検討である。次年度以降、さらに調査していきたい。 4,通史的な把握 濫訴の事前抑止策として、訴訟当事者から判決に従う誓約を裁判所が判決前に徴収していた事例がほぼどの時代にも存在していた(なお、この成果についての論稿を掲載予定である)。しかし、未だ通史的な「濫訴対策」の一端を検討したにすぎず、継続して考察する必要がある。 5,その他 濫訴をふくむ訴訟制度全体を考察する際、「紛争管理論」の観点を導入した。この観点は研究者との交流を通じて得た分析視角である。次年度も議論状況の精査に努め、本研究の最終成果に反映させる予定である。
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