2004 Fiscal Year Annual Research Report
英米の治安判事による裁判・裁定の歴史的特徴についての実証的研究
Project/Area Number |
16730005
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小室 輝久 明治大学, 法学部, 講師 (00261537)
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Keywords | 治安判事 / イギリス / 裁判 / 調停 / 近代史 / 法制史 / アメリカ |
Research Abstract |
1 イギリス治安判事の裁判・裁定史料の分析 イギリス治安判事による業務の遂行および紛争解決の形態は、Quarter Sessions、Petty SessionsないしDouble Justice、Single Justiceの3つに大別される。本件研究ではSingle Justiceの形態の紛争解決に特に着目しており、本年度はこの点について以下の知見が得られた。治安判事が単独で行う業務には、(1)陪審員選定に関する治安官及び十人組長からの復命、(2)貧民に対する通行許可書の発行、(3)教区行政に対する監督、といった行政的な業務と、(4)使用者・労働者間の紛争、(5)家庭内での暴力事件、(6)近隣住民間でのトラブル、といった類型の紛争解決がみられる。いずれの例も、一方当事者の申し立てに基づいて治安判事が召喚令状を発行し、その呼び出しに基づいて出頭した相手方と合意・和解する、(史料上、合意・和解と解される意味で、agreeという用語がしばしば使用されている)、という共通点があると言うことができる。こうした諸事例には、刑事事件のほか、労使関係、家事関係の事件があり、単独の治安判事によって、訴訟とは言い難い非公式なかたちで紛争解決にあたっている例があると見ることが可能である。2 アメリカ治安判事の裁判・裁定史料の分析 アメリカの治安判事は、Court of Common Pleasに対する下級裁判所としての位置づけをされており、刑事事件および民事事件(特に金銭債務)の両方を管轄にしている点でイギリス治安判事と大きく異なる。治安判事職にある者はアトーニ資格をもち法律職としての経験を積んだ者が多く、イギリス治安判事と比較して専門性が高い点が特徴的である。他方で、治安判事が婚姻登録や金銭債務め支払を約する正式誓約書の登録を行っておりいわば公証人のごとき業務を行っている例があり、学識・教養と社会的威信のある治安判事が、一定の社会的安定機能を果たしていたと見ることが可能である。
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