2004 Fiscal Year Annual Research Report
フランス地方自治制度の研究-2003年憲法改正の意義-
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16730009
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯島 淳子 東北大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (00372285)
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Keywords | フランス地方自治 / フランス憲法改正 |
Research Abstract |
本年度は、2003年のフランス憲法改正に関して、資料の収集に力を注ぐとともに、収集した資料について法制度的観点から検討・分析を進めた。 2003年の憲法改正は、第五共和国憲法になって初めて、地方自治制度を抜本的に変革したものであるが、その内容は、基本的には、1980年代の地方分権改革以降展開された憲法院の判例に即している。 そこで、まず、今次改正を検討する不可欠の前提として、改正前の憲法における地方自治制度のあり方を再確認するとともに、1980年代改革後の憲法院判例の意義を厳密に確定する作業をおこなった。 そのうえで、今次改正された憲法の諸条文について、その法的意味の検討・分析をおこなった。具体的には、地方公共団体の行政立法権限(憲法72条3項)、実験の権利(憲法72条4項)、リーダー制度(憲法72条5項)および自治財政権(憲法72-2条)に関しては、これらが従前の憲法院判例を踏まえたものであるため、今次改正が憲法院判例との関係においてどのように位置づけられるかという点に重きをおいて、検討・分析をおこなった。一方、補完性原則(憲法72条2項)および決定型住民投票制度(憲法72-1条)に関しては、これらがフランス法にまったく新たな要素を導入するものであり、今後の判例・学説の展開に多くを負っている部分があることから、現時点ではその法的意義を必ずしも十分に明らかにすることはできないものの、将来の見通しをもふくめて、その法的意義を慎重に探究する作業をおこなった。 さらに、実験の権利、住民投票および自治財政権に関しては、憲法の規定を具体化する組織法律が既に制定されている(実験の権利および住民投票についてはそれぞれ2003年8月1日に、自治財政権については2004年7月29日に、組織法律が制定されている)。これらについては、当該組織法律に関して下された憲法院の判断を分析するとともに、当該組織法律の内容に関し、憲法の趣旨がどのように具体化されているかという点にとくに着目しながら、検討をおこなった。
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