2005 Fiscal Year Annual Research Report
フランスにおける私学助成法制の現代的展開とその憲法原理的考察
Project/Area Number |
16730010
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
今野 健一 山形大学, 人文学部, 助教授 (70272086)
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Keywords | 教育の自由 / 私学助成 / ファルー法 / 教育の公共性 |
Research Abstract |
研究最終年度たる今年度は、昨年度に引き続き、収集すべき関係文献・資料の目録を作成し、これに従って、国立国会図書館や他の国立大学等の国内施設も利用しつつ、基本的な文献資料の収集に努めた。また、これと並行して、昨年度収集した文献資料の整理・読解に本格的に着手し、分析の前提となる基礎資料の作成を進めた。 集積した資料の量はなにぶん膨大であり、未だそのすべてにわたる十分な分析はなしえていないため、詳しい検討内容の公表は、なお後日の課題としてある。ただ、例えば、1850年法(ファルー法)の制定に関わる政治的・社会的背景と議会審議の動向や、1993年〜94年のファルー法の改定をめぐる世論の動きと公法学上の議論(憲法院判決の検討)等に関して、その検討の一部を、来年度刊行予定の自著の記述に織り込むことにしている。 本研究に関わるフランス教育法制改革の課題は、以下のように素描できる。 大革命以来、典型的な近代国家のモデルを維持してきたフランスにおいて、国家による学校教育の掌握と「自由」教育(=カトリック教育)の排斥・周辺化の政治的試みが断続的に現われてきた。しかし、現代に至り、公役務たる教育の有効性、教育の平等の実現等の要請が高まるにつれ、公立学校と私立学校との闘争という古典的図式は後景に退き、むしろ、公教育制度全体の機能の向上を基礎に、両者の平等・衡平な発展のための制度改革が不可欠なものとなっている。そこでは、分権化改革により権限を増す地方公共団体と、財政支援を必要とする私教育部門との関係性の中で、公教育制度の全般的な運用に目配りすべき現代国家の教育機能の再定義が、緊要な課題として浮上することになる。1994年のファルー法改定論議で顕わになったものこそ、この困難な問題なのであった。 教育の「公共性」の再定義と言い換えることもできるこの問題の洞察にとって、ファルー法改定論議は非常に重要な意義をもつものであると見られる。この点を中心に、今後さらに検討を進めたい。
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