2005 Fiscal Year Annual Research Report
麻薬刑法の総合的研究-危険社会における安全と不安の一場面-
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16730038
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
金 尚均 龍谷大学, 大学院法務研究科(法科大学院), 教授 (00274150)
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Keywords | 禁止薬物 / 危険 / 刑法 / 薬物の自己使用 |
Research Abstract |
本年度においては、麻薬刑法における解釈論の諸問題の中で、特に少量の薬物の自己使用の可罰性について研究の重点を置いた。 ここでは、まず第一に、そもそも個人の自己使用に関して「少量」のもつ意義とは何であろうかについて検討した。使用者個人が節度をもって薬物の使用に関して自己決定できる状態で使用し、その限りで他人や他の社会的利益を危険にさらさない場合このような使用は、市民の健康という法益に対する危険の程度が軽微であることから、国家は介入してはいけないということができる。もちろんソフト・ドラッグとハード・ドラッグの相違や薬物の種類によってその効能の程度も様々である。とりわけ、本研究の主たる対象国であるドイツでは、それぞれの薬物に関して、大体において1週間に3回の使用分が目安となっているようである。しかし、その使用が濫用的使用又は依存症の下での使用の場合には、もはや少量であっても、これに対して何らの対応もしないことは問題があると言わざるを得ない。このような場合には何らかの介入の余地がある。 そこで第二の検討課題として、その介入手段が刑法によるのか、それとも刑罰以外の手段によるのかについて検討を加えた。 禁止薬物の使用とそのための所持等は、ドイツの麻薬剤法を見ても違法性があると評価することができる。ただし、ドイツ麻薬剤法31条aで少量の自己使用目的であれば、起訴しないことができるとしている。 第三に、この処罰免除の法的淵源について検討を加えた。
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