2004 Fiscal Year Annual Research Report
企業内法令遵守体制にかかる法的責任分担原則に関する研究
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16730046
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
酒井 太郎 一橋大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (90284728)
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Keywords | 取締役 / 取締役会 / 法令遵守 / コンプライアンス / ゲートキーパー / 注意義務 |
Research Abstract |
本研究は(1)企業内法令遵守体制の有無や機能状況が取締役の法的責任認定に及ぼす影響を検討するとともに、(2)企業内法令遵守体制に関与する者相互間の法的責任の分配のあり方につき考察を加えることを目的とするものである。 平成16年度における研究ではまず前記(1)に関連して、米国のサーベンス・オクスリー法が企業開示内容の真実性確保のため、開示書類作成のプロセスが適正であるかどうかの監視を取締役会に要求している点を調査・検討した(具体的には研究計画のC,D,Eとして行った)。連邦法により取締役の行為規範を定めるやり方には州による会社規制権限を認める米国の法体系上疑問を提示する見解もあるが、取締役の注意義務(監視義務)のうち、いくつかを具体的表現内容を有する形で連邦法として別途規律することは注意義務の内容に変化を与え、州会社法上の、取締役の責任追及にかかる障壁をある程度除去するものとして評価する見解もある。しかし、会計専門家等のいわゆるゲートキーパーについては責任内容が明確であり、かつ罰則も大幅に強化されている反面、取締役の場合責任発生事由が不明確なところもあり、裁判規範としては期待できないとの指摘もある。これを踏まえて、専門家であるゲートキーパーの責任に力点を置くべきであるとする見解も説かれるところ、その責任の根拠及び負担内容と因果関係の立証方法をめぐっては対立がある。 このように議論は錯綜しており、いずれの見解が正しいかは今後の動向を注意深く見ながら確認するほかないようにも思われるが、イベント・スタディと呼ばれる統計学的手法により簡易に究明しようとするアプローチがしばしば採用されており注目されている。そこで平成16年度の研究成果としてまとめた雑誌論文において、イベント・スタディの手法を紹介するとともに、本研究にかかわるいくつかの論点をめぐる議論の有効性について検討を加えた。
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