2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16730057
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山田 泰弘 立命館大学, 法学部, 助教授 (00325979)
|
Keywords | 株主代表訴訟 / 株式交換 / 株式移転 / 企業再編対価の柔軟化 / 原告適格 / 株主の救済 / 取締役の第三者責任 / oppression remedies |
Research Abstract |
本研究は、株主代表訴訟が多発する中、大規模(公開)会社と小規模(閉鎖)会社とでは、代表訴訟によって解決されようとする紛争が質的に異なるのではないか、という仮定の下、大規模(公開)会社を想定した代表訴訟制度改革と、小規模閉鎖会社を想定した代表訴訟改革、または代表訴訟にかわる紛争解決手段の提示を行うことを目標としている。これは、「会社法制の現代化」要綱試案では、株主代表訴訟制度の改革が具体的に提案されていないことを前提にしていた。 本研究の目標を達成するために、本研究は次の方法により行うとした。第一に、株主代表訴訟判決のデータベース化とその分析を通して、紛争実態を明らかにする。第二に、株主代表訴訟制度が「株主の救済」の一つの手段と認識され、それ以外にOppression Remediesを有するイギリス・英連邦諸国の法制度と比較検討することでその解決策を探る。 このうち、第一の点については、まず、株主代表訴訟の判例集掲載分の判例について情報を整理している。株主代表訴訟に関する事案が複雑であるため、どのような指標を取れば、紛争実態を具体的に浮かび上げることができるか、試行錯誤しているところである。 この第一の研究を進める際に、「会社法制の現代化」に関する議論が進み、大規模(公開)会社における株主代表訴訟制度に関しては、喫緊の課題である企業再編が行われることによる株主代表訴訟の原告適格への影響につき、重要な立法提案がなされた。そこで、判例分析の一部を発展させ、山田泰弘「企業再編対価の柔軟化と株主代表訴訟-外国会社株式または現金を対価とする企業再編が株主代表訴訟の原告適格に与える影響-」立命館法学二九六号九〇〜一一八頁(二〇〇四年一二月刊)を執筆した。 第二の点については、カナダで現地調査を行い、UBCのジャニス・サラ準教授、ロナルド・デイビス準教授と意見交換を行い、カナダでの代表訴訟・Oppression Remediesの運用状況や会社を取り巻く環境などに関する幅広い知見を得た。 来年度は、研究二年目として、現在試行錯誤している判例のデータベース化を進め、九月刊行を予定する立命館法学三〇〇号にその成果を掲載することを当面の目標として、研究を進めていきたい。なお、前述の山田泰弘「企業再編対価の柔軟化と株主代表訴訟」は、全国銀行学術研究振興財団よりの研究助成を受けた成果でもある。
|