2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16730057
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山田 泰弘 立命館大学, 法学部, 助教授 (00325979)
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Keywords | 株主代表訴訟 / 監査役 / 退任取締役 / 取締役の第三者責任 / 投資取引 / 説明義務 |
Research Abstract |
平成17年度は、取締役の責任追及訴訟に関する裁判例を収集し、具体的にどのような項目で統計データを取るか、試行錯誤をしている。この試行錯誤の中から、問題点を抽出し、次の2点について研究を進めた。 第一に、投資取引の勧誘に際して投資商品の販売会社の従業員に説明義務違反がある場合に、当該投資商品の購入者に対して、取締役は何らかの責任を負うか、という問題について、研究を進めた。 取締役は、従業員を指揮命令して、会社の業務を行う。この際、取締役・代表取締役は、内部統制の体制を整備し、法令を遵守して業務遂行される状況を整備する義務を会社に対して負う。このため取締役・代表取締役は、従業員が説明義務を尽くした勧誘を行うようにする義務も会社に対して負う。それでは、会社外の第三者に対しても、取締役は何らかの責任を負うか。 この研究では、裁判例がこの問題に対して二つのアプローチで判断していることを明らかにした。第一に、当該被害者に対する勧誘行為に対して取締役が何らかの関与をしている場合や会社ぐるみで違法な勧誘行為を行っている場合は、不法行為責任として認めている。この時に直接の関与はないが、当該違法な勧誘行為により何らかの利得をしている場合には、平成17年改正前商法266条ノ3の責任が肯定されている。第二に、複雑な投資商品のため十分に従業員が説明を尽くせる状況でない場合には、当該会社において説明義務違反の勧誘が多発していることを根拠に、取締役が説明義務を尽くした勧誘を行いうるように整備する義務を起こったとして、平成17年改正前商法266条ノ3の責任を肯定している。第一のアプローチと比較して、第二のアプローチは、具体的に個々の被害者に対して説明義務違反があったかということを必ずしも立証する必要がなくなるため、問題があることを指摘した。 第二の研究は、会社が退任取締役の責任を追及する場合の会社の訴訟代表者が誰か、という問題を検討する。これについては、最高裁平成15年12月16日判決が、代表取締役か監査役が訴訟代表者となりうるとしたが、会社法では、監査役設置会社については、監査役が、委員会設置会社については、監査委員が会社の訴訟代表者となるとするが、それ以外の会社では通常の秩序通り、(代表)取締役が訴訟代表者となり、問題があれば株主総会(取締役会)が訴訟代表者を交代するという制度へと変更された。 この研究は、会社法が最高裁平成15年12月16日判決を修正し、監査機関のある会社とそうでない会社とで、二つのフォーマットを用意したかということを明らかにしている。 いずれも、11で挙げた雑誌掲載論文で、その成果を公開している。
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