2004 Fiscal Year Annual Research Report
経済学専門家の政策決定過程における役割に関する比較研究
Project/Area Number |
16730065
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内山 融 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (00242066)
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Keywords | 専門家 / アイディアの政治 / 政策決定過程 / 制度 |
Research Abstract |
今年度は、第一に、1990年代の日本における政治改革(選挙制度改革)と行政改革(中央省庁等改革)において専門家のアイディアが果たした役割について研究した。この二つの改革では専門家が提示したアイディアが政策決定過程に大きな影響を持ったが、それは、「政策の窓」が開いたことにより、問題、政策、政治の三つの流れが合流したためである。しかし、改革の効果を見ると、どちらの改革も必ずしも所期の目的が達成されてはいない。その理由は、改革の効果に影響するのは公式制度と非公式制度の補完関係であるにもかかわらず、改革の対象となったのは公式制度のみであったからである。この研究では、専門家のアイディアが影響力を持つ条件と、それが実際に効果を発揮するための条件が明らかになった。本研究の成果は「『熱病』の時代-政治改革・行政改革の論理と帰結」として公表される。 第二に、新古典派経済学の主張する自由主義的アイディアが持つ影響力について、日本と英国の比較研究を行った。まず、アイディアの実現の程度を規定する要因としてエグゼクティブ・パワー(首相の権力)に着目した上で、エグゼクティブ・パワーの程度を拒否権プレイヤーと行政府・政党の凝集性という概念により説明する理論枠組みを構築した。これによれば、行政府と政党の凝集性がともに高い英国では政策決定過程において当初のアイディアが実現しやすいが、二つの凝集性がともに低い日本では政策決定過程でアイディアが歪曲されやすいという仮説が得られる。この仮説を検証するために、両国における行政組織改革と郵政(郵便)事業民営化の比較事例研究を行った。本研究の成果は「日本における国家・市場関係の改革-政策アイディアの伝播と制度」として日本政治学会において報告された。
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Research Products
(1 results)