2006 Fiscal Year Annual Research Report
金融危機に対する政策形成過程三国(日本、アメリカ、スウェーデン)比較研究
Project/Area Number |
16730068
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
竹中 治堅 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (70313484)
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Keywords | 金融危機 / 不良政権 / 政権交代 |
Research Abstract |
本研究では、金融危機のように長期的に顕在化しない政策問題がどのように解決される条件について比較政治における集合行為論や政官関係論を参考にしながら探ることを試みた。このため日本、アメリカ、スウェーデンにおける金融危機が発生した時の、政府の対応を比較分析した。 政治状況について把握することにつとめた。 各国を比較して明らかになったのは金融危機の解決される状況に共通の特徴があることである。それは政権交代がおきることが、金融危機の解決を促進するということである。1920年代の日本、80年代のアメリカ、80年代から90年代のスウェーデンの場合、いずれも長期化した金融危機は政権交代がおきた後に初めて解決されている。ただ、政権交代が短期間におわった90年代の日本では政権交代が金融危機の解決を促進することにはならなかった。 政権交代が金融危機の解決につながることは集合行為論や政治家や官僚の選好によってこれを説明することができる。金融問題は長い間顕在化しないため、問題解決に取組もうとする場合、まず問題の存在を認めることから始めなくてはならない。問題の存在を認めることは過去の政策の失敗を認めることである。政権交代がおきていれば、政策の失敗を過去の政権政党に帰することができるのに対し、政権交代がおきていない場合には、与党や官僚機構に対する批判を招くことになる。このため、与党や官僚はなかなか問題解決に取組まず、問題が長期化するのである。金融システムの安定が公共財の性格を帯びており、他の政治アクターが問題解決することを期待し、自らは行動しようとしないただ乗りの問題が発生することも金融危機の長期化につながっている。
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