2004 Fiscal Year Annual Research Report
地方分権化後のインドネシア地方政治の構造再編分析-公共事業に焦点を当てて
Project/Area Number |
16730069
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡本 正明 京都大学, 東南アジア研究所, 助教授 (90372549)
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Keywords | インドネシア / 地方政治 / 地方分権 / 民主化 / バンテン州 / 公共事業 |
Research Abstract |
当研究は、分権化後のインドネシアの地方政治の構造と動態を、公共事業の立案、実施過程に焦点を当てて実証的に明らかにすることを目的とする。そのため初年度に当たる今年度は、私自身がこれまでに行ってきた地方政治関連の研究をとりまとめる一方で、これまでに作り上げてきた学者、NGO関係者、新聞記者、官僚とのネットワークを通じて公共事業に関して集めることが可能なデータの収集を試みることにした。まず、国家と社会の関係、地方自治体と社会の関係、或いは政治権力と経済権力の関係について、バンテン州を事例として分析した。 民主化・地方分権化に伴い、インドネシアにおいては国家による社会の統制力が弱まった。その結果、バンテン州の場合、インフォーマルな暴力装置と同業者連合を抑えることで既に一定程度の社会的、経済的権力を獲得していた地方有力者が、暴力と金を背景としてバンテン州レベルの政治権力も獲得することに成功して、州予算による公共事業を恒常的に分捕る仕組みを作り上げていることが分かった。この成果は近く『東南アジア研究』に掲載される予定である。インドネシアの地方政治研究において、公共事業の独占に至る政治過程についてこれほど実証的に分析したものは存在しないので本成果の意義は高い。 その一方、ゴロンタロ州、バンカ・ビリトゥン州、南スラウェシ州でデータを集め始めた。民主化・地方分権化が始まり、情報の開示も進んだと予想していたが、地方レベルでは思ったほど情報開示が進んでおらず、データ収集は困難であった。それでもゴロンタロ州とバンカ・ビリトゥン州において、現在までに5つの州と州内の県・市自治体の予算とその内訳、同業者連合の幹部リストなどは入手することができた。自治体予算の各プロジェクトを誰が獲得したのかについてのデータはまだ十分に集めることはできていない。収集したデータの分析と更なるデータ収集が次年度の課題である。
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Research Products
(5 results)