2004 Fiscal Year Annual Research Report
ガバナンス責任に関する研究-カナダのNPMとNPOを題材に
Project/Area Number |
16730072
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
毎熊 浩一 島根大学, 法文学部, 助教授 (50325031)
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Keywords | ガバナンス / NPM / NPO / カナダ / 行政責任 |
Research Abstract |
本年度は大きく三つのテーマにつき調査研究を実施した。 まず、「カナダ行革」については、各種イニシアティブの分析を通じて、(特に初期イギリス型)NPMとの「距離」を確認した。端的に言えば、彼国では、いわゆる「政府の撤退」という観念はほとんど見られず、ガバナンスに果たす政府の能動的役割が強く認識されている。また、行政内部においても、柔軟なマネジメント環境の整備という点で「分権」が志向されているものの、組織的な「分離」(エージェンシー等)には慎重である。加えて、各種改革ツールの活用にあたっては、「効率性」重視の潮流とは一線を画し「学習」に重きを置いている。 次に、「市民セクター」については、特に2000年以降カナダ政府が力を入れている「VSI(Voluntary Sector Initiative)」の動向をフォローした。このイニシアティブの主な成果としては、例えば、政府・市民セクター間関係の基本原則を定めた「協定(Accord)」の策定、より具体的な指針や模範的な実例等を記した二つの「規約(Code)」(「資金」および「政策対話」)の公表などが挙げられる。これらの試みは、市民セクター側からも比較的高い評価を受けているようである。 最後に、「ガバナンス責任」に関する理論研究の一環として、わが国における実践動向も睨みつつ「協働」及び関連諸概念について考察した。その結果、通説的な立場とは異なる見解を持つにいたった。例えば、いわば「啓蒙的市民像」が政策論的有効性に欠けること、混同されがちな「協働」と「参加」は明確に峻別されるべきこと、原理論的にみれば市民セクターが行政の「補完」的立場にあるのではなく逆であること等である。なお、かかる知見は、島根県議会および県知事に「陳情」した「島根県地域いきいき活動促進条例」(本文、逐条解説、資料等を含めてA4紙約90頁)に結実せしめている。
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