2004 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の行政組織における政策学習の様態に関する研究
Project/Area Number |
16730076
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
秋吉 貴雄 熊本大学, 大学院・社会文化科学研究科, 助教授 (50332862)
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Keywords | 政策学習 / 政策過程 / 比較政治 / 規制改革 |
Research Abstract |
本年度は、第一に政策学習に関する理論研究を行った。そこでは、まず、ヘクロの学習概念以降提示されてきた、比較政治学におけるホールの社会的学習、ローズの教訓導出、政策科学におけるサバティアの政策志向学習、等の学習概念について概観した。そして、それらの理論研究をもとに政策学習概念を包括する分析枠組みとして、政策過程及び政策変容過程との関連から、(1)政策パラダイムの転換、(2)政策アイディアの構築、(3)政策アイディアの制度化、という3つの学習から構成される連鎖的学習の概念という知見が得られた。また、同時に、その学習過程に影響を及ぼす制度及びアイディアの概念についても考察を進め、特に、わが国における「政策担当部局の割拠的自律性」という制度特性が具体的にどのように影響を及ぼすかということについても検討を進めた。 第二に、事例に関する予備調査を行った。本研究においては、わが国の航空輸送産業における1980年代からの規制改革過程を事例として取り上げていくが、本年度は特に規制改革のきっかけとなった1985年の航空憲法(昭和45年閣議了解・47年運輸大臣通達)の改革過程について検討を行なった。そこでは、上述の分析枠組みを元に、(1)規制改革のイシュー化、(2)政策アイディアの構築、(3)政策アイディアの制度化、という3つの段階について考察を行った。そして、考察の結果、(1)制度による制約(閉じた空間としての政策決定の場、規制当局の割拠的自律性、政策遺産)、(2)アイディアの限界(アイディアの混乱、認識コミュニティの不在)、という要因から、(1)政策パラダイムの不完全な転換、(2)政策アイディアの変質、(3)妥協としての制度化、という政策学習の歪みが生じ、米国での包括的な改革とは大きく異なった、規制当局の裁量の余地を大きく残した限定的な改革にとどまったことが確認された。
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