2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16730085
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
佐藤 真千子 静岡県立大学, 国際関係学研究科, 助手 (40315859)
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Keywords | 政治学 / アメリカ外交研究 / 非政府組織 / 人権 |
Research Abstract |
本研究では、アメリカで発足し、人権問題の改善および民主化支援を国際的に展開しているNGO(フリーダム・ハウス[以下FHと略記]とヒューマン・ライツ・ウォッチ[以下HRWと略記])に焦点を絞り、その活動の歴史的展開の検討を通して、アメリカ外交における関与の実態についての考察を行った。主に、それぞれによる出版物や報告資料および本部や海外事務所でのインタビューに基づく研究を進めた。 FHは、アメリカ国内で孤立主義が支配的だった1939年、ヒトラーの全体主義に対して民主主義諸国を守るために、世論への啓蒙キャンペーンや議会とローズベルト大統領へのロビー活動を通して武器貸与法の成立に貢献した前身組織を起源とする。以来、FHは人権や民主化の問題領域においてアメリカ外交を中枢と側面から補完あるいはリードする自発的かつ積極的なアクターとしての役割を果たし、その存在意義を保っていることが明らかとなった。FHと政府の人的つながりは歴史的に深い。FHの理事や代表に政府の要職を務めた人や大物議員が常に名を揃え、またFHから大統領指名で各要職に抜擢されて政策決定や対外交渉に寄与した人が多いという特徴は、FHが外交決定の仕組みに自動的に組み込まれていることを意味しないが、一定の政治的役割を果たしていることは明白といえる。NGOがアメリカ外交において自らの信念を実現するために、一方の政府関係者は対外政策の立案や目的を推進するために、人権および民主化の問題領域において協働関係をとる例としてFHを挙げることができよう。政府がどこまでNGO側の提言や要求を取り入れ、外交政策で考慮するようになっているのかについて、さらに具体的に検証する必要がある。FHよりも約30年後に登場したHWRもFHと類似した役割を果たしているが、こちらの詳細な分析とFHとの比較検討もあわせて今後も研究継続し、成果として公表することとしたい。
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