2004 Fiscal Year Annual Research Report
地域統合組織および統合深化過程への参加に関する国民投票についての研究
Project/Area Number |
16730087
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
五月女 律子 藤女子大学, 文学部, 助教授 (50326526)
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Keywords | 国際関係論 / 政治学 / 欧州連合(EU) / 欧州統合 / 地域統合 / 国民投票 / スウェーデン / ヨーロッパ政治 |
Research Abstract |
1991年時点の世論調査で、スウェーデン国民の欧州連合(EU)への加盟賛成は60%を超えていたにもかかわらず、1994年11月のEU加盟を問う国民投票の直前には賛否は拮抗した。国民投票のキャンペーンにおいて活動を行った加盟反対派は、多くの有権者を反EU加盟へと動員することができず、国民投票では賛成がかろうじて半数を超え、スウェーデンは1995年にEUに加盟した。 国民のEUの経済通貨同盟(EMU)への支持率は世論調査において大きく増減していたが、2003年9月のEUの共通通貨であるユーロの導入を問う国民投票直前には、賛否は拮抗した。国民投票のキャンペーンにおいては、ユーロ導入反対派が論戦をリードし、国民投票の結果は反対が過半数を占め、ユーロ導入は否決された。共通通貨の導入という統合深化への参加に対しては、スウェーデン国民は拒否の姿勢を見せた。 両国民投票を比較すると、賛成派は共通して、経済的安定・成長や企業競争力の強化といった面での利点を主張し、EUへの影響力増大のためにもEUの経済統合過程に参加することを訴えた。反対派は共通して、EUでは民主主義が徹底されていない点を問題として挙げ、EUの統合過程に組み込まれることによって、国家の独立性を失い、スウェーデンの高水準の社会福祉、雇用対策、男女平等の質が低下し、特に女性が不利益を被る可能性を強調した。 相違点は、1994年には当時の経済危機を脱する手段としてEU加盟が捉えられ、経済問題としてEU問題が議論されたのに対して、2003年には共通通貨の導入が、経済問題というよりも、政治問題として議論されたことが挙げられる。また、2003年では投票のかなり前に態度を決定していた有権者が多数であり、EUでの統合や協力に対しては肯定的であっても、ユーロの導入に対しては否定的な姿勢をとる国民が多いという特徴が見られた。
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