2005 Fiscal Year Annual Research Report
テロリズム・市民・平和:アルゼンチンの「汚い戦争」の起源に関する考察
Project/Area Number |
16730088
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
杉山 知子 東海大学, 政治経済学部, 助教授 (90349324)
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Keywords | テロリズム / 市民社会 / アルゼンチン / 安全保障 / アメリカ / 国際関係理論 / 民主主義 / 軍部 |
Research Abstract |
平成17年度では、以下3点が主要な研究実績である。 1.アルゼンチンで2週間程度の実地調査をおこない、1970年代の政治事情について、事実の把握をおこなっている。この実地調査では、首都ブエノスアイレスに加え、大規模な暴動やゲリラ戦のあった北西部地域のツクマンなどを訪問し、都市と地方都市という観点から、汚い戦争や汚い戦争以前のゲリラ活動などについて資料収集を目的とする調査をした。調査の結果、北西部に拠点を置いていた人民革命軍のようなゲリラの規模や国家の脅威になる危険度については、十分検討の余地があるということが理解できた。 2.収集した資料を分析、検討した結果、アルゼンチンに限らず、ラテンアメリカ軍部が冷戦期に共有していた「国家安全保障ドクトリン」の形成に対して、アメリカの影響力が大きいといわれているが、アメリカ以前にアルジェリアの独立をめぐりゲリラやテロと戦っていたフランスの影響も同様に大きいのではないかという知見が得られた。 3.今回の収集資料を分析、検討した結果、アルゼンチンの「汚い戦争」は、軍部の視点に立つと、1970年代前半及び半ばのアルゼンチンは、冷戦の最前線にあり、ペロン政権は、国家転覆運動や革命から国家を守るために十分機能しておらず、政治的暴力を肯定する傾向すらあるということが理解できた。同時に、「汚い戦争」の戦争責任は、軍部だけではなく、当時のゲリラや政治的暴力を肯定していた政府関係者にも責任があると言う知見が得られた。さらに、戦争や虐殺行為が、時間を経てどのように記憶され、解釈されていくのかについても考察していくことが今後の研究課題である。
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