2005 Fiscal Year Annual Research Report
技術選択と知識蓄積の相互作用が経済成長パターンに与える影響の理論的研究
Project/Area Number |
16730097
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀井 亮 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 講師 (90324855)
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Keywords | 技術選択 / 知識蓄積 / 経済成長 / 成長サイクル |
Research Abstract |
補助対象研究の中間年度に当たる本年度は、初年度より進めてきた技術選択・知識蓄積の基礎理論の構築を論文の形にまとめ、国内外での報告を通じて内外の研究者からの有益なフィードバックを得ることができた。 まず、民間主体に知識蓄積のインセンティブを与えるには知的所有権が重要であること鑑み、論文"Economic Growth with Imperfect Protection of Intellectual Property Rights"において知的所有権保護と経済成長の関係をまとめた。知的所有権保護を強めると、民間主体に技術革新(知識蓄積)の誘因を与える一方、多くの産業部門が長期間独占される弊害が伴う。ところが、独占された部門においては、既存企業の技術革新誘因は弱く、さらに外部企業の研究も既存企業に比べると蓄積された知識の利用可能性の面で不利なため、部門全体の技術革新スピードを弱めてしまう。その結果、中程度の保護が長期の知識蓄積・経済成長の面で最適であることが解った。 技術選択についても2つの予備的研究をまとめた。論文"Finance, Technology and Inequality in Economic Development"において、金融インフラストラクチャーの整備が、より効率的な技術を採択するために必要であることが示された。但し、高度な技術への転換によって一時的に所得分布が不平等化するため、必ずしも平均的な経済主体は金融インフラの改善を望まないことが解った。また、原始的技術が天然資源に多く依存する一方、先進技術は知識(人的資本)に強浮く依存する傾向に注目し、論文"Wealth Heterogeneity and Escape from the Poverty-Environment Trap"では途上国において原始的技術の利用が環境悪化を招き、生産性の悪化を通じて先進技術への意向を困難にしていることが示された。その場合、一時的に所得再分配を弱め、不平等性を許容する政策が貧困の罠からの脱出に重要であること解った。 最後に技術選択と知識蓄積の相互依存が経済変動を生むプロセスを、論文Wants and Past Knowledge : Growth Cycles with Emerging Industriesにまとめ、ロンドンでの国際学会Econometric Society World Congress 2005および、アムステルダムでの国際学会European Economic Association Amsterdam 2005において報告し、多くの有益なコメントを得た。これらコメントを受け改訂を行い、次年度はトップジャーナルへの掲載を目指す。
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