2004 Fiscal Year Annual Research Report
経済成長と出生率・死亡率の相関関係と人的資本の果たす役割
Project/Area Number |
16730102
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
影山 純二 明海大学, 経済学部, 講師 (50337490)
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Keywords | Longevity / Lifetime / Economic Growth / Development / Human Capital / Education / Mortality / Multiple Equilibria |
Research Abstract |
経済発展初期における所得と余命の関係を見てみると、「所得の上昇が余命の上昇を促すケース」、「余命の上昇が所得の上昇を促すケース」の両者が観察される。19世紀からの長期時系列データを利用して所得と余命の関係を分析すると、前者のケースは先進国でよく見られたパターンで、イギリスやフランスなどがその代表的な例であるとことがわかる。一方、後者のケースは発展途上国でよく見られるケースで、中国やタイがその代表的な例だと言える。また、所得も余命も成長しないケースも見受けられる。ボツワナなどのサブサハラアフリカ諸国である。 このように、経済発展初期における所得と余命の関係は、3つにわけることができる。この3つのパターンの理論的説明を試みた結果、人的資本を導入することによって可能となった。人的資本を蓄積することには、所得を増加させる効果、医療技術を進歩させ余命の伸ばす効果があり、それとともに、余命の伸長には人的資本の蓄積を促進する効果があるからである。この結果、順序が「所得の上昇、人的資本の蓄積、余命の伸長」と、「余命の伸長、人的資本の蓄積、所得の上昇」という2つの経済発展パターンが、説明可能となった。 加えて、人的資本を介在させることにより、所得の上昇と余命の伸長の間にポジティブフィードバックが発生し、内生的成長が起こることが明らかとなった。したがって、ひとたび成長経路にのると自律的に成長するが、成長経路にのることができない場合にはポバティートラップに陥ってしまうという実際に観察される現象が、人的資本の蓄積過程で説明可能であることがわかった。 上記の分析の結果、経済成長における余命と人的資本の重要性が明確となった。したがって、サブサハラアフリカ諸国などの経済発展を促す際には、医療・健康促進、教育といった分野に関する援助が重要と言える。
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Research Products
(2 results)