2004 Fiscal Year Annual Research Report
デヴィッド・ヒュームにおける文明社会の盛衰認識の研究
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16730107
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
壽里 竜 関西大学, 経済学部, 専任講師 (20368195)
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Keywords | ヒューム / 文明社会 / イングランド / ブリテン / 18世紀 / 啓蒙思想 / スコットランド啓蒙 |
Research Abstract |
「1980年代以降のヒュームの社会・経済思想研究」は、基本的には研究サーヴェイ論文ではあるが、欧米の近年の研究動向を概観するとともに、そこからヒュームの文明認識へと議論を発展させている。1980年代以降の研究動向を大きく支配した「富と徳」というパラダイムを中心にヒューム研究を整理した。結論部分においては、今後の研究動向の見通しとして、ヒュームの文明社会像の評価、すなわちヒュームの提示した文明社会理論や経済理論と、彼が目の前にしていた文明・経済的現実との距離が問題になることを指摘した。 「ヒューム『イングランド史』抄訳(1)第23章末尾小括」は、共同研究であるが、壽里は今回、翻訳と訳注を担当した。ヒュームの主著『イングランド史』の第23章末尾には、文明が盛衰を繰り返すという認識がもっとも明確に示されている箇所であり、本研究課題の分析にとっても、また問題関心を同じくする研究者にも有益な情報提供となったと思われる。 なお、今年度は、東京で開催された31st Annual Hume Society Conferenceにおいて"The Idea of chivalry in Scottish Enlightenment : The case of David Hume"というタイトルで報告をおこなった。騎士道(Chivalry)は、通常、啓蒙思想においては野蛮な中世に属するものとされているが、ヒュームを含むスコットランド啓蒙の思想家たちは、かならずしも騎士道を否定的なものとはみなしておらず、女性への丁重な扱いの起源として、むしろ文明の萌芽とすらみなしていたことを強調した。この学会報告おいて、海外の研究者を含む各方面よりコメントをいただき、学会誌投稿にむけて、現在書き直しを進めている最中である。
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