2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヒックス厚生経済学の形成と展開--神戸商科大学所蔵「ヒックス文庫」を手がかりに
Project/Area Number |
16730108
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
金井 辰郎 長野工業高等専門学校, 一般料, 助教授 (90332022)
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Keywords | J.R.Hicks / ヒックス文庫 / 功利主義 / 厚生経済学 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、ヒックスの厚生経済学・経済理論に関連する未公刊資料を中心に、解読、考察を行った。年度途中に兵庫県立大学より「利用規程を改正したので資料の複写各1部を認める」との連絡が入ったため、急遽、考察対象の資料のマイクロ化を業者に依頼し、複写各1部を入手、勤務地にて作業をすることが可能になった。ヒックスの筆跡は解読困難であり、作業は難航している。現状では、数年の作業で全体像をつかむことは困難であると思われ、むしろ、当面の研究の方向性に沿って対象を絞りつつ進めていくことが妥当であると考えている。次年度はより専門的な解読能力を持つ業者の協力も仰ぎながら、研究速度を早めたい。 現時点での研究関心・到達点(仮説)は以下の通りである。ヒックスは一般に高く評価されている(ノーベル賞受賞理由でもある)自身の前期の消費者余剰論、厚生経済学に対し、(「ヒックス文庫」中の未公刊資料を含む)著作の随所で不満を述べており、そのことからも、それら前期の成果とは異なる、代替的なアプローチに基づく厚生経済学(「社会的生産物」を測定物とした理論?)を構築しようとしていたことが窺える。もし、その厚生経済学に関する代替的アプローチを模索する過程・結果が明らかになれば、通説的なヒックス評価すなわち前期の厚生経済学などを中心とする評価とは異なったヒックス像が抽出できる可能性がある。さらに残り1年間の研究期間において検証したい。
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