2005 Fiscal Year Annual Research Report
家計の選好パラメータの推定とその規定要因に関する実証研究
Project/Area Number |
16730109
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大久保 正勝 筑波大学, 大学院・システム情報工学研究科, 講師 (30334600)
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Keywords | 消費の異時点間代替 / 耐久消費財 / 非ホモセティック選好 / 社会資本 / 資本の限界生産性 / リスクシェアリング / 一般化積率法 / 共和分 |
Research Abstract |
本研究では日米のマクロ経済データと日本の地域パネルデータを利用し,消費者の選好パラメータの推定とマクロ経済モデルの前提に関わるリスクシェアリング仮説を検証した.以下の点が新たに明らかとなった. 1.異時点間代替の弾力性(IES)を推定する際,従来の研究で用いられた非耐久財と耐久財のホモセティック選好の仮定は,所得効果を無視し代替の弾力性の上方バイアスもたらすため,非耐久財と耐久財の代替効果に起因するIESの下方バイアスを過度に調整することになる.そこで非ホモセティック型CES効用関数を新たに導入し,このバイアスがIES推定値に及ぼす影響を米国のマクロ経済データを用いて検証した結果,(同時点の)代替の弾力性は従来考えられていたよりも小さく,また,従来のIES推定値0.3-0.5に対して,0.2前後のIESが有意に推定されることが分かった. 2.日本の93SNAデータを用いて,同じくIESの推定を行った結果,日本の家計のIESもほぼ米国と同様の値を取ることが明らかとなった.また,日本においても非耐久財と耐久財の代替効果に起因するIESの下方バイアスが存在し,加えて,日本においては短期金融市場利子率が適当な資産収益率指標とはいえず,上記の米国データの研究で用いたモデルに生産を明示的に導入し,資本の限界生産性を使用する必要があることも明らかとなった.また,資本の限界生産性の計算には,社会資本の役割を考慮する必要があることも,本研究のより広いクラスのモデルのもとで明らかとなった. 3.日本の地域パネルデータを用いて,DRRA選好をもとに完全リスクシェアリング仮説の検証を総消費,食料費,非食料費に関して行った.結果は,(1)必需性の高い食料費でリスクシェアリングの程度が高く,逆に非食料費で低いこと,(2)時間を通じたリスクシェアリング変化を計測した結果,必需性の高い食料費では安定しているが,非食料費は変動が大きいことが明らかとなった.
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