2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16730161
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川口 大司 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 講師 (80346139)
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Keywords | 自営業者 / 仕事の満足度 |
Research Abstract |
今年度の研究は2年計画の1年目であるが、自営業者が起業するに当たりハードルが存在しているかどうかをまず調べることから実証分析を始めた。仮に自営業者になるに当たってのハードルが存在せず、自営業セクターと賃金労働セクターの移動が自由ならば、裁定により両セクターにおいて労働者が得る効用水準は同じであるはずである。そこで、この仮説を日本と米国のデータを用いて実証分析した。 日本のデータとしてはJapan General Social Surveysを用いたが、この中で特に仕事の満足度についての主観的なデータを用いた。自営業者のほうが高い仕事の満足度を持つことが明らかになったが、学歴や年齢、居住地域などといった変数をコントロールした後は、仕事への満足度には自営業者・賃金労働間に有意な違いがないことが明らかになった。また、仕事への満足度という主観的な指標を用いた分析であることに留意して、自営業者と賃金労働者でそもそも仕事の満足度の報告の仕方が違うという可能性を考慮し、父親が自営業者であったかどうかを操作変数とした推定を行った。この分析によっても結果は変化せず、日本においては自営業者になるに当たってのハードルといったものがそれほど高くはない可能性が示唆された。 米国のデータであるNational Longitudinal Survey 1979を用いた研究でも同じ分析をおこなった。こちらはパネルデータである特徴を活かして、個人間の満足度の報告の仕方の違いを許す固定効果推定をおこなった。米国においては自営業者が高い仕事への満足度を報告しており、固定効果推定を行っても結果に変化はなかった。よって自営業者のほうが高い仕事への満足度を持っており、このことは自営業者になるに当たっては何らかのハードルが存在し、ゆえに現に自営業者となっているものはレントを享受している可能性があることを示唆する。
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