2004 Fiscal Year Annual Research Report
移転価格税制の経済分析-移転価格の算定方法を中心に-
Project/Area Number |
16730169
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
井田 知也 大分大学, 経済学部, 助教授 (50315313)
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Keywords | 移転価格税制 / 多国籍企業 / 税務当局 / 独立企業間価格 / 税務調査 / 価格操作 / 不確実性 / 無限繰返ゲーム |
Research Abstract |
移転価格税制の下での多国籍企業と税務当局の戦略的行動の分析から,税務当局が執行体制の強化を通じてその調査能力を向上させることが,移転価格問題にどのような効果をもたらすのかの分析を行った.本研究で用いたモデルでは,本国にある多国籍企業の親会社と外国にあるその子会社間である財が取引されることを想定し,従来の研究ではあまり考慮されていなかった移転価格税制の適用時に必要な税務調査やそれに関する費用・不確実性も考慮している.この場合の移転価格税制の適用時に必要な税務調査やそれに関する費用・不確実性は,税務当局の本税制に対する執行体制の強化の程度に依存するとしている.そして,通常,両者の関係は長期的に継続することが多いことから,静学ゲームだけでなく無限繰返しゲームも用いて,両者の関係が短期的な場合だけでなく長期的に継続する場合についても分析を行った.その結果,税務当局と多国籍企業の関係が短期的である場合,税務当局が移転価格税制に対する執行体制の強化を通じてその調査能力を向上させても,ナッシュ均衡戦略は「多国籍企業の親会社は移転価格問題を起こす,税務当局は移転価格税制を適用する」と社会厚生が低くなるとなった.しかし,両者の関係が長期的に継続する場合にそれらが行われると,両者の切替戦略がサブゲーム完全なナッシュ均衡となり,各段階での結果が「多国籍企業は移転価格問題を起こさない,税務当局は移転価格税制を適用しない」と社会厚生が高くなることを示すことができた.以上の結果から,移転価格税制の下での多国藷企業と税務当局の戦略的行動の分析より,両者の関係が長期的に継続する場合,税務当局の執行体制の強化を通じた調査能力の向上は,移転価格問題が起こらない高い社会厚生の実現に有効であることが示せた.
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