2004 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル・ヒストリーへの試み-アジア綿織物市場の観点より-
Project/Area Number |
16730177
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塩谷 昌史 東北大学, 東北アジア研究センター, 助手 (70312684)
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Keywords | 綿織物 / 企業家 / マーケティング / 消費文化 / 競争優位 / ロシア経済史 |
Research Abstract |
本年度の課題は、19世紀前半にロシアの企業家ポシーリンがアジア市場に対してどのようなマーケティング戦略を立て、消費者のニーズにどのように対応していたかを歴史資料に基づいて検討することにあった。本年はロシア国立図書館に所蔵されている『ウラジーミル新聞』を1839年〜55年の期間を閲覧し、マイクロフィルム化し日本に持ち帰った。ポシーリンは当時アジア市場(ペルシア、中央アジア、中国)に自社製品である更紗を輸出していたが、中央アジアや中国の市場ではある程度の成功を収めるものの、ペルシア市場では敗北を喫した。通常、ペルシアでの失敗は、ペルシア市場に参入した英国製更紗との競争に敗北したからだと考えられてきたが、『ウラジーミル新聞』の資料に基づけば英国製品の要因だけではなく、ロシアとペルシア間の商慣習の違いも相当影響していることが明らかとなった。当時、ポシーリンはペルシアでの更紗販売を促進し、ペルシア商人に商品を信用で販売していたが、その売掛金をペルシア商人から最終的に回収できなかったことが、ペルシア市場におけるポシーリン敗北の直接の要因である。ポシーリンは当時ロシア政府やペルシア政府に回収の支援をするよう強く要請したが、最終的には両政府はポシーリンを支援しなかった。なぜポシーリンがペルシア商人から売掛金を回収できなかったかは、今後の課題として研究を続けていく予定である。 今年度の研究経過は、平成16年10月に弘前大学で開催された経営史学会で報告を行った。また、本課題と関わる報告を平成16年5月に大阪市立大学で行われた社会経済史学会全国大会のパネルディスカッション「近代ヨーロッパ国際商業-国家・市場・商人の役割-」(深沢克己氏の組織による)にパネラーの一人として参加し報告を行った。
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Research Products
(2 results)