2004 Fiscal Year Annual Research Report
第一次大戦から戦間期のイタリアにおける「貯蓄の資本市場への動員」と産業再建
Project/Area Number |
16730180
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 カンナ 名古屋大学, 大学院・経済学研究科, 講師 (30334999)
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Keywords | イタリア / 戦間期 / 大不況 / 銀行救済 / 公的介入 / 産業復興公社(IRI) / 金融再編 / 国家持株会社 |
Research Abstract |
1930年代初頭、大不況下のイタリアでは、大規模な公的介入による大銀行救済が行われた。それは、公的機関IRI(産業復興公社)が、三大銀行の資産・負債を引き継ぐことで、三大銀行の財務内容を改善するというやり方をとり、この結果、三行と、三行が債権や株式を保有していた数多くの非金融会社が、一時的に公的機関に保有されることになった。本研究では、IRIが担った二つの重要な課題、(1)大銀行や企業の経営再建と、(2)発券銀行や政府の公的救済の債権回収について、IRIと発券銀行、大銀行の財務諸表や内部資料から、厳格なデフレ政策の制約の下で、IRIによる産業再生のための融資活動がどのように実施され、また、救済債権の回収がどのように進められたかを検証している。さらに、IRIと発券銀行・国庫,IRIとその傘下の三大銀行との債権債務関係が、整理されていく過程を明らかにした。IRIが作成し、経済再編の思想的ベースとなった「銀行問題研究」や、個々の産業部門の再建問題に関する研究を紐解くと、同機関の債権回収活動は、単に、救済債権の無計画な投売り・現金化を意図したものではなく、経済再編の青写真の上に計画されたことが確認される。そのため、IRIによる公的介入は、イタリア経済の原状回復を目指すものではなく、三大銀行の国家(IRI)による持続的な保有の決定や、1936年の銀行(預金保護)法制定による金融秩序の安定化、IRIの「産業持株会社」としての恒久機関化、というような、イタリア経済の構造に根本的な影響が及ぼすことになった。この一連の変革は、「貯蓄の資本市場への動員」を目指して行われ、IRIはまた、民間資本の利害を束ねる民間金融会社との協力を通しても、市場に働きかけていたことが確認される。
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Research Products
(1 results)