2004 Fiscal Year Annual Research Report
株式持合い解消と企業財務のリストラクチャリングに関する理論的・実証的研究
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16730190
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
砂川 伸幸 神戸大学, 大学院・経営学研究科, 助教授 (90273755)
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Keywords | 株式持ち合いの解消 / エントレンチメント・アプローチ / 債務免除 / 銀行の財務内容 |
Research Abstract |
本研究の目的は,近年のわが国企業財務の顕著な特徴である株式持ち合いの解消と企業財務のリストラクチャリングについて,理論的・実証的に分析することである.本年度(平成16年度)は,株式持合いの解消と企業財務のリストラクチャリングについて,主に理論的研究を行った. 株式持ち合いの解消については,コーポレート・ファイナンスにおけるエントレンチメント・アプローチを用いてモデル分析を行った.モデルでは,株式持合いとコーポレート・ガバナンスのプレッシャーの強さの関係に注目した.株式持ち合いを維持し,自らのエントレンチメントを高めることは,経営者の意に反して,外部からのガバナンス・プレッシャーを強める可能性がある.その場合,経営者は株式持ち合いを解消し,株主重視の企業経営を志向する必要がある.機会主義的な行動をとる経営者が,外部からのプレッシャーを受けて,自ら株式持ち合いを放棄するという結論は興味深い.この研究成果は,現在執筆中であり公刊論文にはなっていない. 企業財務のリストラクチャリングに関する研究では,財務状態が悪化した企業の債務免除(私的整理から企業再生への初期プロセス)に影響する要因として,金融機関との関係,金融機関の財務状況に注目して研究した.理論研究の結果,金融機関の財務内容が債務免除の成否に影響することが明らかになった.また,債務免除に合意した銀行の株価が下落するというインプリケーションを導いた.実際の株価動向を調べると,債務免除のアナウンスメントが銀行の株価にネガティブな影響を与えている事例がある.理論分析の結果は海外ジャーナルに投稿し受理された(印刷中).今後は実証研究に取り組んでいく.
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