2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16730192
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
大坪 稔 佐賀大学, 経済学部, 助教授 (90325556)
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Keywords | 純粋持株会社 / カンパニー制 / 分社化 / 多角化 / スピン・オフ / リストラクチャリング / 内部資本市場 / 事業部制 |
Research Abstract |
本年は、主として米国企業によって1980年代に実施されたリストラクチャリングに関する調査を行った。1960年代における第三次M&Aブーム以降、米国企業は積極的に多角化を実施してきた。これまで企業の多角化の経済的効用については様々な主張がなされてきたものの、少なくとも1980年代の米国企業を対象とした多くの実証研究より、多角化が企業価値を損なわせていること、すなわちDiversification Discount(以下、DDとよぶ)が生じていることが明らかとなっている。なぜ、DDが生じるのかについては様々な理由が指摘されているものの、多角化企業における内部資本市場の非効率性が最も有力な理由とされている。つまり、従来、多角化企業の経済的効用のひとつとして効率的内部資本市場の構築があげられていたものの、少なくとも1980年代の多角化した米国企業では内部資本市場が非効率であったと考えられたのである。 このようなDD問題に対し、米国企業はスピン・オフ、エクイティ・カーブアウトなどをはじめとするダイベスティチャーを実施した。すなわち、米国企業はダイベスティチャーというリストラクチャリングを実施することで脱多角化を行い、DD問題の緩和を行ったのである。 これに対し、日本企業が1990年代に実施しているリストラクチャリングの多くはダイベスティチャーではない。このような日米企業間の相違が生じる理由として、(1)日本企業とアメリカ企業では多角化の程度や多角化とパフォーマンスの関係において相違が存在する、(2)多角化により生じるパフォーマンスの低下という事象は両企業ともに同様であるものの対処の方法が異なる、ことが考えられる。今後、この問題について引き続き研究を進める予定である。
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