2004 Fiscal Year Annual Research Report
多元的な価値尺度による企業評価に資する企業の情報開示の可能性に関する研究
Project/Area Number |
16730248
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Research Institution | Osaka Seikei College |
Principal Investigator |
記虎 優子 大阪成蹊短期大学, 経営会計学科, 専任講師 (50369675)
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Keywords | コーポレート・コミュニケーション / 包括的企業情報開示 / 企業の情報開示拡大化の理論的基礎 / アカウンタビリティ概念の拡張 / 利用者指向的会計理論 / ステークホルダー理論 / 企業の社会的責任 / 非財務情報 |
Research Abstract |
1 コーポレート・コミュニケーション概念の会計学研究への援用 企業の情報開示をコーポレート・コミュニケーションの一形態として捉えることを試みた。そして、企業の情報開示をコーポレート・コミュニケーションの一形態として捉えることの意義には、(1)多様なステークホルダー全体に向けた情報開示の可能性、すなわち財務報告、環境報告、社会報告の統合化の可能性を示唆していること、(2)多様なステークホルダー全体に向けたレポーティングと、ステークホルダー別のレポーティング(とりわけ投資家を主たる情報利用者とする財務報告)との関連性を明確にし、両者の整合性を図ることの必要性を示唆していること、などがあるという知見を得た。 2 企業の情報開示拡大化の理論的基礎に関する検討 企業の情報開示拡大化の理論的基礎に関して、アカウンタビリティ概念の拡張を中心に、各論者の諸見解を検討した。そして、利用者指向的会計理論は、会計学研究におけるアプローチの方法としてすでに不動の地位を確保していると言えることから、利用者指向的会計理論と整合的な、企業の情報開示拡大化の論拠を提示することが必要であり、この観点からステークホルダー理論を会計学研究に援用できる可能性があるという知見を得た。 3 CSRの高まりと企業の情報開示拡大化に関する検討 最近、企業の情報開示において非財務情報の重要性が高まっている背景のひとつには、企業の社会的責任(CSR)を重視する動きが強まっていることがある。この観点から営業・財務概況(OFR)をめぐる英国の動向を検討した。そして、OFRをめぐる英国の動向が示唆するように、財務報告、社会報告、環境報告等の境界があいまいになりつつあることは、企業の情報開示において開示されるべき情報内容の拡大化を会計の視点からも統合的にとらえて検討することの必要性を示唆しているとの知見を得た。
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