2004 Fiscal Year Annual Research Report
引きこもり経験者の「社会復帰」:実践コミュニティとアイデンティティの視角から
Project/Area Number |
16730252
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
荻野 達史 静岡大学, 人文学部, 助教授 (00313916)
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Keywords | 引きこもり(ひきこもり) / 社会復帰 / 参与観察 / インヴュー / 実践コミュニティ / 青年期 / 中間施設 / 移行 |
Research Abstract |
観察地点は、社会復帰支援施設であり、いわゆる中間施設から外部社会への移行をめぐる諸問題・諸条件について検討することが具体的なテーマである。本年度はとくにデータ収集に力をいれた。主に二つの中間施設をフィールドとしており、方法としては参与観察と非構造化インタビューを用いた。東北地方の施設では計3週間ほどの参与観察を行い、関東地方の施設では1週間行った。前者では、利用者7名、スタッフ3名について録音をするインタビューを行った。後者の施設では、スタッフ2名に録音をするインタビューを行った。また、近畿地方にある施設については代表者1名に同様のインタビューを行った。他に若年者就労支援を行っている近畿地方の公設機関についても担当者にインタビューを行っている。こうしたフィールドワークから以下のような点について注意しつつ、分析を深めるべきことが明らかになってきた。まず、「引きこもり」という言葉の曖昧さと近年の流布による部分もあると思われるが、中間施設の利用者についての多様性がますます高まっていることが、代表者・スタッフのあいだで認識されている。多様性とは、対人関係などについて示す関心・行動のパターンに関わる部分にまず表れることが指摘されるが、こうした多様性を踏まえた多様な「社会復帰」の形態を考慮することがさらに求められている。その中で、施設内部での対人関係、活動状況からみるかぎり、就労も可能であろうと思われる層についてみると、中間施設としては、外部への移行について、動機付けをしつつ具体的なイメージを利用者に提供できることが重要なポイントとなっていることが伺えた。それはたとえば、スタッフあるいは利用者において、そうした移行促進的なモデルを形成できることの重要性として観察された。こうした論点については、2004年度日本社会学会の「社会病理・逸脱」部会においてデータと合わせて報告している。
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