2004 Fiscal Year Annual Research Report
社会階層論への合理的選択理論の応用に関する理論的・計量的研究
Project/Area Number |
16730255
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
太郎丸 博 大阪大学, 人間科学研究科, 助教授 (60273570)
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Keywords | 社会階層 / 合理的選択理論 / 社会移動 / 大学進学 / 相対的リスク回避 / 信念 / ロジスティック回帰分析 / ジェンダー |
Research Abstract |
荒巻(1997)、原・盛山(1999)によれば、階層間の大学進学率の格差は、1955-1995で不変である。欧米の多くの国でも同様の傾向がみられる。進学率が上がったのに、なぜ階級間格差は縮小しないのか?これが解明すべきそもそもの問題である。 これに対するひとつの説明が、相対的リスク回避仮説である。子供は、親と同じかそれ以上の階級に到達する確率を最大化しようとする、とこの仮説は仮定する。 大学に進学すると、成績がよければ、サービス階級に到達する確率が上がり、下層階級へ落ちる確率は下がるが、成績が悪ければ、下層階級に落ちる確率が上がるとさらに仮定する。大学に行かなければ、サービス階級に到達する確立は非常に低いので、サービス階級の子は可能な限り大学進学し、労働者階級は、成績の良い子だけが大学進学する、とこのモデルからは予測される。このような選好と信念は、戦後不変なので、大学進学率の階級格差は変化しなかった、という説明が考えられる。 相対的リスク回避仮説を検討するために、1995年のSSM調査データを再分析したところ、男子に関しては仮説は支持されたが、女子に関しては支持されなかった。分析の手続きは以下のとおりである。仮説が想定するような選好や信念を人々が持っているかどうかはSSMのデータでは確かめられない。しかし、もしも仮説が正しいとすると、成績、出生年、出身家庭の資産、父母学歴など関連するどんな変数でコントロールしても、出身階級が大学進学率に有意な効果を及ぼすはずである。また、サービス階級では、成績の効果が小さいはずである。男子に関しては予測どおりの結果が出たが、女子に関しては、成績とサービス階級の交互作用項かが見られなかった。父職の直接効果はあるので、所属階級が女子の選好にも何らかの影響を及ぼしていると思われるが、相対的リスク回避仮説が想定したメカニズムとは異なることはまちがいない。
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Research Products
(1 results)