2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16730269
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
佐藤 恵 桜美林大学, 国際学部, 専任講師 (90365057)
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Keywords | 「震災弱者」 / 自己決定 / ボランティア / NPO / 支援 / 「支え合い」 / 「距離をおく」技法 / ネットワーキング / 「コミュニティ」形成 |
Research Abstract |
阪神大震災の被害を受けた「震災弱者」(特に被災障害者)の生活再建・自立に向けた自己決定と、ボランティア/NPO(具体的事例としてNPO法人・被災地障害者センター)による支援に関する実証研究をヒアリング調査に基づき遂行した。現在に至るまで、センターの活動の基本は、「顔の見える関係」で障害者の自己決定を支援し、「支え合う」ことにある。そうした取り組みの中心は、「この人」の「かけがえのなさ」にこだわった個別具体的な配慮・支援を提供していくことである。その際、センターにとって重要な意味を持つ支援技法の一つが、障害者の意見の「代弁」や自己決定の「代行」を回避する、すなわち「距離をおく」という技法である。「代弁」「代行」ではなく、障害者の自己決定を尊重し、自立を支援することが志向されるのであり、当事者の自己決定そのものをエンパワーすることが主眼とされている。その上でセンターは、「顔の見える関係」にある障害者への配慮・支援を継続的なものとしていくために、市民の共感づくりや、他の支援グループとのネットワークづくりに力点を置く。ネットワークの結合形態は、従来型の運動組織などに見られる強連結とは異なり、弱連結である。センターにおける「支え合い」は、同質化し閉鎖的関係を形成することの回避を念頭に置いており、異質者の補完的関係としての弱連結を基盤とする。それは、既存の同質的価値の共有を強制するのではなく、「被災地発の人のあり方」としての「支え合い」を、オルターナティブな価値として自ら生み出していくような、提案型のネットワーキングでもある。こうした弱連結型のネットワーキングを、共同性にウエイトを置いた「コミュニティ」形成という側面から見ることもでき、それは弱連結が架橋連結になる可能性、つまり各地域における支援実践の架橋連結の可能性の展望ともなる。
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Research Products
(3 results)