2006 Fiscal Year Annual Research Report
都市部と近郊自治体における福祉・医療資源の分配構造に関する福祉社会学的研究
Project/Area Number |
16730281
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青山 泰子 北海道大学, 文学研究科, 助手 (80360874)
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Keywords | 福祉資源 / 医療資源 / 福祉社会学 / 在宅高齢者 / 高齢者福祉 |
Research Abstract |
農村・漁村の生活は、特に高齢者の場合、居住年数が数十年を超えることも珍しくなく、日常的に第一次産業に従事していることが多いなど、その生活形態を都市部と一括りにはできない。市町村合併を背景としたの行政サービスの効率化が叫ばれる一方では、長年その土地で営まれてきた住民の生活を支えていく方法を模索する地域福祉の議論がある。平成18年度において本研究は、農村部に居住する高齢者の生活とそれを支える地域的な基盤や仕組みを、地域福祉的な観点から考察した。 高齢者の生活基盤と地域特性に関しては、ひとつの農村部の中においてさえも無視しえない地区ごとの特徴が存在している点をあげたい。各地区の特性は、高齢者にとっての「身近なコミュニティの単位」として把握するのに有効である。この単位は、居住暦の長い一人暮らし高齢者の生活基盤を形成していて、日常的に行き来する近隣住民の存在やその人間関係などの情報の把握や共有は、行政サービスの供給やその仕組みにとっての要件となりうる。 保健・福祉サービスの展開と問題点については、サービスに対する認知度は総じて高いものの、サービスの種類によっては程度に差があり、情報伝達に課題が残されていた。地域資源を活かした福祉サービスに人気がある事実は、地域特性という観点からも情報価値が高い。また行政サービスを支える公的な存在は、高齢者に共通の接点を持つ人的資源であり、他住民との交流機会が相対的に希薄な高齢者にとっては、公的存在がかかわる余地は大きい。 近隣市町村との関係と市町村合併の余波という点では、福祉サービスの存続自体に影響を与えうること、広域化することの行政的なスケールメリットと地域福祉の課題は、地元の事情を汲むことなしには議論しえない。ただし、医療資源という観点では、小規模自治体にとって都市部の医療機関との関係は継続される必要があることを指摘しておく。
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